最新記事

新型コロナウイルス

在日ドイツ大使館、日本の新型コロナ検査数の少なさを懸念

2020年4月7日(火)18時00分
モーゲンスタン陽子

検査が限定されている日本の状況はドイツからは非常に危険だと映るようだ...... REUTERS/Issei Kato

<在日ドイツ大使館から在日ドイツ人にメールが配信され、「検査数が少ないため、かなりの規模の未報告感染が発生していると考えられる」と注意喚起されていた......>

日本での新型コロナ感染急増の可能性と、大規模な検査をしない日本政府の方針については先週、在日アメリカ大使館が自国民に対して注意喚起しているが、それに先駆けて3月末、在日ドイツ大使館も同様の通達をしていた。

「同胞の手紙」と名付けられたこの一連の連絡は在日ドイツ人にメールで配信され、またオンラインでも閲覧することができる。最新感染状況、空の便の混乱や移動制限などへの注意喚起が目的で、同様の手紙は在日ドイツ大使館だけでなくバンコクやナイロビなどのドイツ大使館でも出されている。

ただ、在日ドイツ大使館の7通目の手紙の一節に独紙が目をつけた。

「日本における感染リスクは真剣に評価することができない」

問題の一節は3月24日付の「同胞の手紙」第7号。その中の「日本における感染リスクは真剣に評価することができない。実行された検査数が少ないため、かなりの規模の未報告感染が発生していると考えられる」という部分だ。さらに、検査が重症の人や、感染者との接触が疑われる人に限定されていることも危惧している。さらに、同様の指摘は26日付の第8号でもなされている。

ドイツ大手紙の1つヴェルトは「ドイツ外交官による非外交的な声明」と題した記事でこの手紙について触れ、やはり日本での感染者数の発表に大きな疑問を呈している。

パンデミックが始まったとされる中国より、地理的にも経済的にも日本よりずっと遠い国々であるアイルランド、イスラエルやルクセンブルグなどでの感染数よりはるかに少ないこと、そしてこの数が人口比でも驚くほど小さいこと、さらに、高度な医療システムを持つ国の割には死亡率が高すぎることなどから、日本では有効な検査がほとんど実施されていないだろうと指摘。

統計は必ずしも真実、少なくとも完全とは言えず、パンデミックの最中に現場で耐えるドイツ外交官もそう考えたのがこの「非外交的な発言」の原因だと結論づけている。

広範囲な検査実施が死亡率低下の鍵

ただ、「同胞の手紙」は大筋では大使館が自国民にあてる一般的な注意喚起なので、ヴェルトはやや深読みをしすぎのようにも思われる。我々在独日本人も日本国大使館から定期的にこの種の配信を受け取る。

ドイツは6日現在感染者数が世界上位4位であるにもかかわらず死亡率が低いことで英米から注目されているが、その根底に大幅な検査実施があると信じられている。したがって、日本のように検査が限定されている状況は非常に危険だと映るようだ。

「夏季オリンピックが今年開催されることになっていたので、[日本は] 最高の状態で世界に自分を紹介したかったのだ。政府は長いこと、夢をあきらめ、夏季オリンピックを延期することをためらっていた」と指摘したうえで「安倍晋三政権の指導は十分なのか? 政府は問題について過小評価しているのか? 9年前の福島での原発事故後の不始末以来、日本人は政権への信頼を大幅に失っている」と問いかけている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米政権、相互関税を前に貿易障壁報告書を公表

ワールド

豪中銀、政策金利据え置き 米関税の影響懸念

ワールド

米大使館、取引先にDEI禁止順守を指示 スペインな

ワールド

トランプ米政権、ハーバード大への助成・契約90億ド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中