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緊急事態宣言と医療崩壊の日中比較:日本を救う道はまだあるのか?

2020年4月6日(月)14時14分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

この情報によれば、厚生労働省が公立・公的病院の再編、統合をめぐり、診療実績が特に少ないなどの全国400余りの病院名を公表したことを踏まえ、「病院や過剰なベッドの再編は、公立・公的病院を手始めに、官民ともに着実に進めるべきだ」などと提言したとのこと。要するに安倍首相は「一刻も早くベッド数を減らせ!」と指示しているわけだ。

実は10月4日の会議で過剰なベッド数の削減に対して地方自治体は強く批判している。厚生労働省による400余りの地方の病院名公表は、地方自治体には知らせずに一方的に行われたようだ。

10月17日には<公立病院再編 国と自治体 意見交換会 反発の声相次ぐ>にあるように、橋本厚生労働副大臣は個別の病院名を公表したことは、「唐突だった」として「反省している」と陳謝している。これに対し自治体側からはデータの撤回を求めるなど、反発の声が相次いだというのに、それでも10月28日に安倍首相は前掲の「病院再編と過剰なベッド数の削減など指示」にあるように、「全国に13万もの過剰なベッド数がある。それを緊急に削減せよ」と加藤厚労大臣に厳しく指示しているのである。

いま安倍政権のコロナ対策基本方針には、「入院患者が多くなりすぎると医療崩壊を起こすので、あまり検査を行わないようにする」という、何とも「国民の命を二の次」に置いている感があるが、医療崩壊、医療崩壊と繰り返すのなら、「全国で13万床も無駄になっていて、一刻も早く削減せよと厚労省に迫っている過剰なベッド」を、コロナ入院患者に回すように工夫することは出来ないのか。

もちろん安倍首相の激しい催促によって、すでに消失したベッドや病院(診療所に変更)などにより、医療従事者の数も減少方向にあり、もはや取り返しはつかないのかもしれない。あるいは「過剰なベッド数を削減せよ」という安倍首相の催促に抵抗した地方自治体が何とか自分の地域を守っているのかもしれない。ただ、安倍首相が「前言を撤回します」というニュースもなかったように思う。

筆者は医療方面に関しては素人なので、具体的な提言はできないが、少なくとも日中の医療体制や緊急事態対応体制に関する違いを浮き彫りにして、日本人の命と生活をコロナ危機から守る一助にして頂ければと思い、比較分析を試みた。


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

Endo_Tahara_book.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』(遠藤誉・田原総一朗、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

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