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感染症対策

日本と同じ?違う? ロックダウンしていないスウェーデンの場合

2020年4月3日(金)16時00分
モーゲンスタン陽子

マスクをする人もほとんどいないストックホルム(4月1日) TT News Agency/Fredrik Sandberg via REUTERS

<調査された欧州11カ国で3月28日までに最大4300万人が感染していると予想され、ロックダウンにより約59,000名の死亡が防がれた可能性があるという......>

インペリアル・カレッジ・ロンドンの新型コロナウイルスに関する最新研究で、ロックダウンの成果によりヨーロッパ全体で3月31日までに約59,000名の死亡が防がれた可能性があるという結果が出た。

ロックダウンは有効、でも継続の必要性

対象はオーストリア、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリスの11カ国。調査によると、11カ国で3月28日までに最大4300万人(全人口の約11.4%)が感染していると予想される。イタリアのロックダウンが始まった3月11日を起点とし、欧州疾病予防管理センター (ECDC) のデータに基づいて算出されている。

調査対象の11カ国のうちスウェーデンを除く10カ国がロックダウン中だが、まだ期間も浅く、各国での蔓延の段階にもばらつきがあり、予想には大幅な揺れがあるが、それでも政府による「強力な介入」の成果により全体で約59,000名の命が救われたと算出された。とくに、イタリアやスペインなど被害の状況の大きい国でこの効果は顕著だったようだ。

研究は、強硬手段に踏み切った各国政府の決断を評価しているが、ロックダウンなどの措置が現状で感染をどれだけコントロールできているかを見極めるのは時期尚早であること、また、集団免疫を持つには至っておらず、介入をやめたとたんに感染が瞬く間に広まる可能性もあることから、強硬措置をしばらく継続する必要性を強調している。

個人の責任感に任せるスウェーデンでは

一方、対象国のなかでただ一国、ロックダウンを回避して独自路線をとっているのがスウェーデンだ。以前から柔軟な勤務形態が推進されている国なので、在宅勤務はもともと多い。29日から50人以上の集会は禁止されているものの、「通常通りのビジネス」のモットーのもと、文化施設やレストランなどの営業や利用も可能となっている。もちろん、手洗い、他人との接触を避け極力自宅にこもる「ソーシャル・ディスタンシング」は推奨されてはいるが、どちらかというと個人の常識に働きかける方向で、政府の強制介入という形ではない。

sweden0403a.jpg

COVID-19 reports-Imperial College London


福祉政策の充実したスウェーデンでは国民の政府に対する信頼が非常に厚く、政府のアドバイスにきちんと耳を傾ける人が多いようだ。他国では、警告を無視し出歩くことをやめない一部の人々が減らないためロックダウンに踏み切らざるを得なかったという背景もある。

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