最新記事

中国経済

新型コロナが収束に向かう中国──前代未聞の経済収縮からの脱却と世界戦略の始動

2020年4月2日(木)11時10分
三尾 幸吉郎(ニッセイ基礎研究所)

感染拡大に歯止めがかかり、経済活動と人々の生活は持ち直し始めている(3月27日、北京にて) Carlos Garcia Rawlins-REUTERS

<1-3月期のGDPが前年比約-50%になった中国だが、今ではウイルスの発生源だった武漢市の封鎖解除にもメドがつき、農民工の職場復帰や工場の操業再開が急ピッチで進んでいる>

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2020年3月27日付)からの転載です。

中国経済の現状

新型コロナウイルスが中国経済に与えた打撃の凄まじさが明らかになってきた。中国国家統計局などが公表した最近の経済統計を総点検したところ、1-3月期の国内総生産(GDP)は前年比年率で50%前後と前代未聞のマイナス成長となりそうである。本稿ではその詳細をご紹介したい。

【供給面の3指標】

まず、工業生産(実質付加価値ベース)の動きを確認すると、20年1-2月期は前年比13.5%減と、19年通期の同5.7%増から一気にマイナスに転じた(図表-1)。業種別に見ると、鉱業は前年比6.5%減、製造業は同15.7%減、電力エネルギー生産供給は同7.1%減となっており、特に自動車、鉄道・船舶・航空宇宙・他運輸設備、紡績などの製造業への打撃が大きかった(図表-2)。

Nissei200401_1.jpg

他方、PMIの動きを確認すると、2月の製造業PMI(製造業購買担当者景気指数)は35.7%と、1月の50%から14.3ポイントの急落となった(図表-3)。同予想指数も41.8%に急落しており、製造業の先行きの見方も一気に暗転した。また、非製造業に目を転じると、2月の非製造業PMI(非製造業商務活動指数)は29.6%と、1月の54.1%から24.5ポイントの急落となった(図表-4)。建築業が1月の59.7%から2月には26.6%へ、サービス業も53.1%から30.1%へ急落しており、ともに製造業を上回る大幅な落ち込みとなった。同予想指数も40.0%に急落しており、非製造業に関しても一気に見通しが暗くなった。

Nissei200401_2.jpg

【需要面の3指標】

一方、個人消費の代表指標である小売売上高の動きを見ると、1-2月期は前年比20.5%減と19年通期の同8.0%増から一気にマイナスに転じた(図表-5)。業種別に内訳が公表される一定規模以上の小売統計を見ると、飲食が前年比39.7%減、自動車が同37.0%減、家具類が同33.5%減、衣類が同30.9%減、家電類が同30.0%減など、どれを取っても大幅な前年割れだった。生活必需の日用品と外出制限令が追い風と見られたネット販売は健闘したものの、日用品は前年比6.6%減、電子商取引(商品とサービス)も同3.0%減と前年のレベルを上回るには至らなかった。

また、投資の代表指標である固定資産投資(除く農家の投資)の動きを見ても、1-2月期は前年比24.5%減と19年通期の同5.4%増から一気にマイナスに転じた(図表-6)。内訳を見ると、製造業が19年通期の前年比3.1%増から1-2月期には同31.5%減に、不動産開発投資が同9.9%増から同16.3%減に、インフラ投資が同3.8%増から同30.3%減にいずれも大幅に落ち込んでおり、特に製造業とインフラ投資への打撃が大きかったことが分かる。

Nissei200401_3.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中