新型コロナが収束に向かう中国──前代未聞の経済収縮からの脱却と世界戦略の始動
注目業種の動きを見ると、自動車製造が19年通期の前年比1.5%減から同41.0%減へ大きく落ち込んだのに加えて、19年通期には2桁増と好調だった業種でも落ち込んでおり、コンピュータ・通信・電子設備製造が19年通期の前年比16.8%増から同8.3%減へ、教育が同17.7%増から同21.8%減へ、文化体育娯楽も同13.9%増から同23.1%減へとそれぞれ大きく落ち込むこととなった(図表-7)。
もうひとつの経済の柱である輸出(ドルベース)の動きを見ても(図表-8)、1-2月期は前年比17.2%減と19年通期の同0.1%減から大きく落ち込んだ。また、先行指標となる新規輸出受注を見ても、2月には28.7%と拡張・収縮の境界となる50%を大きく割り込んでしまった。
【その他の景気4指標】
また、筆者が定点観測しているその他の景気4指標(電力消費量、道路貨物輸送量、工業生産者出荷価格、通貨供給量)の動きを、ここでご紹介しておこう。
まず、電力消費量は19年通期の前年比4.5%増から1-2月期には同7.8%減に落ち込んだ(図表-9)。第1次産業は同3.9%増、住居用も同2.4%増とプラスを維持したものの、新型コロナ対策の打撃が大きかった工業生産は同11.4%減に落ち込んだ。
また、物流への影響も深刻だったようで、道路貨物輸送量は19年通期の前年比5.1%増から1-2月期には同24.8%減に大きく落ち込んだ(図表-10)。
他方、工業生産者出荷価格(PPI)の動きを見ると、2月は前年比0.4%下落だった。食品類はアフリカ豚熱の影響で同5.1%上昇したものの、新型コロナ対策による工業生産の停滞で原材料が同2.2%下落しており、販売の不振を背景に耐久消費財も同2.0%下落した(図表-11)。
一方、金融面の動きを見ると、2月の社会融資総量残高の伸びは前年比10.7%で1月から横ばいに留まり、通貨供給量(M2)は同8.8%増と1月の同8.4%増から伸びを高めた(図表-12)。中国人民銀行(中央銀行)が旧正月(春節)連休明けの2月初めに1.7兆元(日本円換算で26兆円)の大量資金供給に踏み切ったのに加えて、新型コロナウイルスの感染拡大とその対策による景気下押し圧力を緩和するため、防疫関連品の供給拡大や業務再開に必要な資金を提供する融資を実施、それに呼応して商業銀行が融資を積極化するとともに、中小零細企業向け融資の返済猶予に乗り出したことが影響したものと見られる。なお、3月13日には預金準備率の引き下げを決め、約5,500億元(日本円換算で8兆円)の資金を市場に放出することとなった。
【新型コロナの関連指標】
周知のとおり中国では新型コロナウイルスが猛威を振るった。中国国家衛生健康委員会によれば、3月25日時点で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の確認症例は81,285名、死亡者は3,287名、致死率は4.04%となっている。新型コロナの発火点となったのは湖北省の武漢市だった。その武漢では、そもそも病床の空きが少ない中で、新型コロナに感染した人やその疑いを持つ人が病院に押し寄せて"医療崩壊"に陥った。そして、病院で診察できない人が街にあふれることとなったため、日本でも映像が放映されたように突貫工事で病棟を建て増すとともに、人民解放軍の医療スタッフを投入して治療にあたることとなった。その責任を問われて更迭された元書記(武漢市トップ)の馬国強氏も「責任を感じる。少しでも早く厳格な措置を取っていれば、結果は今よりも良かった」と釈明している。