最新記事

中国経済

新型コロナが収束に向かう中国──前代未聞の経済収縮からの脱却と世界戦略の始動

2020年4月2日(木)11時10分
三尾 幸吉郎(ニッセイ基礎研究所)

注目業種の動きを見ると、自動車製造が19年通期の前年比1.5%減から同41.0%減へ大きく落ち込んだのに加えて、19年通期には2桁増と好調だった業種でも落ち込んでおり、コンピュータ・通信・電子設備製造が19年通期の前年比16.8%増から同8.3%減へ、教育が同17.7%増から同21.8%減へ、文化体育娯楽も同13.9%増から同23.1%減へとそれぞれ大きく落ち込むこととなった(図表-7)。

もうひとつの経済の柱である輸出(ドルベース)の動きを見ても(図表-8)、1-2月期は前年比17.2%減と19年通期の同0.1%減から大きく落ち込んだ。また、先行指標となる新規輸出受注を見ても、2月には28.7%と拡張・収縮の境界となる50%を大きく割り込んでしまった。

Nissei200401_4.jpg

【その他の景気4指標】

また、筆者が定点観測しているその他の景気4指標(電力消費量、道路貨物輸送量、工業生産者出荷価格、通貨供給量)の動きを、ここでご紹介しておこう。

まず、電力消費量は19年通期の前年比4.5%増から1-2月期には同7.8%減に落ち込んだ(図表-9)。第1次産業は同3.9%増、住居用も同2.4%増とプラスを維持したものの、新型コロナ対策の打撃が大きかった工業生産は同11.4%減に落ち込んだ。

また、物流への影響も深刻だったようで、道路貨物輸送量は19年通期の前年比5.1%増から1-2月期には同24.8%減に大きく落ち込んだ(図表-10)。

Nissei200401_5.jpg

他方、工業生産者出荷価格(PPI)の動きを見ると、2月は前年比0.4%下落だった。食品類はアフリカ豚熱の影響で同5.1%上昇したものの、新型コロナ対策による工業生産の停滞で原材料が同2.2%下落しており、販売の不振を背景に耐久消費財も同2.0%下落した(図表-11)。

一方、金融面の動きを見ると、2月の社会融資総量残高の伸びは前年比10.7%で1月から横ばいに留まり、通貨供給量(M2)は同8.8%増と1月の同8.4%増から伸びを高めた(図表-12)。中国人民銀行(中央銀行)が旧正月(春節)連休明けの2月初めに1.7兆元(日本円換算で26兆円)の大量資金供給に踏み切ったのに加えて、新型コロナウイルスの感染拡大とその対策による景気下押し圧力を緩和するため、防疫関連品の供給拡大や業務再開に必要な資金を提供する融資を実施、それに呼応して商業銀行が融資を積極化するとともに、中小零細企業向け融資の返済猶予に乗り出したことが影響したものと見られる。なお、3月13日には預金準備率の引き下げを決め、約5,500億元(日本円換算で8兆円)の資金を市場に放出することとなった。

Nissei200401_6.jpg

【新型コロナの関連指標】

周知のとおり中国では新型コロナウイルスが猛威を振るった。中国国家衛生健康委員会によれば、3月25日時点で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の確認症例は81,285名、死亡者は3,287名、致死率は4.04%となっている。新型コロナの発火点となったのは湖北省の武漢市だった。その武漢では、そもそも病床の空きが少ない中で、新型コロナに感染した人やその疑いを持つ人が病院に押し寄せて"医療崩壊"に陥った。そして、病院で診察できない人が街にあふれることとなったため、日本でも映像が放映されたように突貫工事で病棟を建て増すとともに、人民解放軍の医療スタッフを投入して治療にあたることとなった。その責任を問われて更迭された元書記(武漢市トップ)の馬国強氏も「責任を感じる。少しでも早く厳格な措置を取っていれば、結果は今よりも良かった」と釈明している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、1カ月半内にサウジ訪問か 1兆ドルの対

ビジネス

デフレ判断の指標全てプラスに、金融政策は日銀に委ね

ワールド

米、途上国の石炭からのエネルギー移行支援枠組みから

ビジネス

トランプ氏、NATO加盟国「防衛しない」 国防費不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中