新型コロナ、急がれる医薬品開発──抗ウイルス薬やワクチンがなかなかできないのはなぜ?
さらに、医薬品メーカーの中には、新型コロナから回復した患者の血液に含まれる抗体を活用した新薬開発に取り組む動きも出てきている。これは、「血漿(けっしょう)分画製剤」と呼ばれる医薬品だ。臨床試験を早期に開始して、9ヵ月から18ヵ月程度で終える計画、と報道されている。
ただし、こうして作られた医薬品の効果を見極めることは簡単ではない。仮に医薬品を投与された患者の病状が軽快したとしても、それが医薬品によるものなのか、それとも医薬品とは別に安静に療養していたことで快方に向かったものなのか、よくわからないためだ。このため、臨床試験の結果は、効果と副作用の有無について、慎重に判断していく必要があるものとみられる。
ワクチンの開発も容易ではない
ウイルス性の感染症では、予防のためにワクチンを接種することが有効となる。かつて蔓延した、はしか、水痘、おたふくかぜ、ジフテリア、ポリオ、破傷風などの病気は、ワクチンの予防接種が浸透して9割を超える人が免疫をもつようになっている。
ワクチンには、はしかのように予防接種で免疫を獲得すれば二度とかからないようにできるものもあるが、インフルエンザのように予防接種をしても感染してしまうものもある。ただ、その場合でも、感染後にあまり重症化しないで済むといった効果が期待できるため、ワクチンとしての有効性はある。
ワクチンのタイプとして、生きた原因微生物を発症しない程度に弱毒化したうえで使用する「生ワクチン」と、微生物の全体または一部を感染しないように無毒化して免疫を獲得する「不活化ワクチン」がある。
生ワクチンは、弱毒化したとはいってもわずかに発症のリスクが残るため、免疫不全者や妊婦には使用できない。はしか、水痘、おたふくかぜなどに対しては、生ワクチンが用いられる。
一方、不活化ワクチンは、発症のリスクはなく免疫不全者や妊婦にも使用できるが、獲得できる免疫が限られていて、その持続期間も生ワクチンに比べて短い。ジフテリア、ポリオ、破傷風などに対しては、不活化ワクチンが用いられる。
どちらのワクチンにしても、発症のリスクを減らす、もしくは無くす一方で、免疫を獲得できることが求められる。ワクチンの開発では、新薬と同様に、ワクチン候補について臨床試験で有効性と安全性を確認することが必要となる。
政府は、今回の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、海外の研究機関等とも連携して、ワクチン開発を進めることを表明している。しかし、ワクチンの専門家からは、ワクチン候補ができても、臨床試験を実施して有効性と安全性を確かめて、国の承認を得て実用化するまでには、何年もかかるとの声もあがっている。