最新記事

感染症対策

新型コロナ、急がれる医薬品開発──抗ウイルス薬やワクチンがなかなかできないのはなぜ?

2020年3月25日(水)12時50分
篠原 拓也(ニッセイ基礎研究所)

このように、ワクチン開発も、抗ウイルス薬と同様、簡単には進まない見通しだ。実際に、SARSやMERSに対してもワクチンは開発されていない。

医薬品メーカーの担当者によると、SARSの場合は、ワクチン候補の臨床試験が可能になる前に、SARSの感染自体が終息してしまったという。また、MERSの場合は、SARSに比べて感染拡大が緩やかだったこともあり、「ワクチン開発に、すぐに多くの時間と資金を費やすのは合理的でない」との声が、複数の研究者からあがっていた模様だ。

さらに、ワクチンの安全性に対する危惧も、開発に時間がかかる理由の1つとなっている。そもそもワクチンは、健康な人が病気を予防するためのものである。もし、ワクチンを打つことで、健康な人が病気になってしまうようなら、大問題となりかねない。そこで、ワクチン開発では、接種によるリスクが、得られる利益よりも圧倒的に小さいことを証明していく必要があるのだ。

抗ウイルス薬やワクチンが開発されるまでは......

現在、多くの医薬品メーカーが、抗ウイルス薬やワクチンの開発に取り組んでいる。

1月末に、国立感染症研究所は、新型コロナウイルスの分離に成功したと発表している。今後は、このウイルスが国内外の研究機関に広く配布され、開発が進められていく見込みとなっている。医薬品の開発が、着実に進められることを期待したい。

それでは、抗ウイルス薬やワクチンが実用化されるまでの間、一般の市民はどうすればよいか。

ありきたりではあるが、帰宅時、食事前、トイレ後の石鹸での手洗い、アルコール消毒を徹底する。人が集まる場所(電車や職場、学校など)では、マスクを付ける等の咳エチケットを励行する。集団感染を防ぐために、換気が悪く、人が密に集まって過ごすような空間に、集団で集まることを避ける。─など、日常生活の中で、いますべき感染症対策を粛々ととることだと思われるが、いかがだろうか。

Nissei_Shinohara.jpg[執筆者]
篠原 拓也 (しのはら たくや)
ニッセイ基礎研究所
保険研究部 主席研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独IFO業況指数、12月は予想外に低下 来年前半も

ビジネス

EU、炭素国境調整措置を強化へ 草案を正式発表

ワールド

インドネシア中銀、3会合連続金利据え置き ルピア支

ワールド

戦略的互恵関係を推進、国会発言は粘り強く説明=日中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中