最新記事

メンタルヘルス

新型コロナウイルスの「不安」から自分を守る方法

2020年3月11日(水)18時45分
松岡由希子

不安への処方をネット検索して、かえって不安が増しがちに...... AlessandroPhoto-iStock

<新型コロナウイルスへの不安やパニックがグローバル規模で広がっている。英バース大学の臨床心理学者が、そうした不安への対処法を提言している......>

新型コロナウイルス(COVID-19)が世界各地で猛威をふるい、グローバル規模で不安やパニックが広がっている。感染予防に最大限努めることはもちろん、不安や恐怖によって心身の健康を損なったり、日常生活に支障をきたさないよう十分留意することが肝要だ。

恐怖は、脅威から身を守るうえで必要な反応だ。生命維持や本能行動、情動行動に関与する大脳辺縁系と分析的な思考などをつかさどる大脳新皮質との複雑な相互作用によって脅威を評価し、これを特定すると「闘争・逃走反応」が引き起こされ、アドレナリンが放出されて、動悸や発汗、めまい、息苦しさなど、身体的な反応が現れる。

不安への処方をネット検索して、かえって不安が増しがち

闘争・逃走反応は、新型コロナウイルスへの不安によっても引き起こされる可能性がある。

英バース大学の臨床心理学者ジョウ・ダニエルズ博士は「これまでにメンタルヘルスを害した経験のない人には、新型コロナウイルスでメンタルヘルスの問題が起きることはほぼないだろう」とみる一方、「慢性疾患を持つ患者は不安を感じるリスクが高く、心身の健康へのサポートが必要だ。健康に不安を感じ、健康にまつわる情報や身体症状を気にしがちな人も、新型コロナウイルスの感染拡大によって、メンタルヘルスを悪化させるリスクがある」と指摘している。また、多くの不安を感じ、簡単に安心できない傾向のある人も、同様のリスクがあるという。

不安な気持ちを落ち着かせようと、気になる症状をグーグルで検索して、かえって不安が増すなど、私たちは、ストレスや不安があると、逆効果となる行動をとりがちだ。不安やストレスを解消するための行動が不安を増幅させているときは、一旦、冷静になって振り返ろう。

情報をチェックする頻度を減らし、意識的に呼吸をしよう

ダニエルズ博士は、不安に伴う心身の症状を弱める方法として「情報をチェックすることを止める」よう勧めている。ニュースやSNS上で絶え間なく流れてくる情報をモニタリングし続けることが、不安を増幅させる要因となるからだ。情報をチェックする頻度を減らし、信頼性のある情報を確認するようにしよう。事実に基づく情報であれば、安心できる。

ストレスや不安があると、過呼吸や浅い呼吸がよく起こる。意識的に呼吸をしよう。闘争・逃走反応がリセットされ、不安に伴う不快な身体症状やパニックの発症を抑えることができる。また、運動をすると、不安に伴うアドレナリンの過剰な放出の抑制に役立つ。

「日常を継続し、ストレスを軽減することが生き残る鍵だ」

また、ダニエルズ博士は、最も重要なポイントとして「孤独にならない」ことを挙げる。強制的に隔離された場合であっても、ビデオチャットなどを介して、家族や友人と話し、孤独と戦うことが必要だ。

未知の部分がいまだ多く、終息を見通せない新型コロナウイルスに対して、警戒や予防措置はもちろん不可欠だ。しかし、これによって多くの人々が心理的苦痛を抱え、パニックが広がるのは望ましいことではない。ダニエルズ博士は「落ち着いて日常生活を継続し、不必要なストレスを軽減することこそ、生き残る鍵だ」と説いている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中