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新型コロナウイルス新型肺炎ワクチン開発まで「あと数カ月」、イスラエルの研究機関が発表
VACCINE HOPES
日本でも3月5日、大阪大学と民間企業が共同で新型コロナウイルスの感染予防用DNAワクチンの開発に乗り出すと発表。写真は大阪大学の森下竜一教授 REUTERS/Issei Kato
<世界各地で開発の動きが競うように進んでいる。他のワクチンの応用で記録的スピード開発の可能性も。本誌3月17日号の特集「感染症vs人類」より>
世界で死者3400人以上、感染者は10万人を超えた新型肺炎COVID-19。そのワクチン開発まで「あと数カ月」との見込みをイスラエルの研究機関が明らかにした。
新型肺炎のウイルスはSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)と同じコロナウイルスの一種だ。イスラエルの研究機関ミガルは2月27日、鳥が感染する鶏伝染性気管支炎ウイルス(IBV)用に開発したワクチンの有効性が前臨床試験で証明されたとの声明を発表。
IBVは新型コロナウイルスと遺伝子コードが似ており、感染メカニズムも同じと判明している。「ごく短期間で有効なヒト用ワクチンを開発できる公算が高い」と言う。
研究者らはIBV用ワクチンを新型ウイルス用に調整し今後、試験管内または生体内試験を行って安全基準クリアを目指す構えだ。これにより「新型肺炎の世界的な感染拡大に対抗するワクチンの生産開始が可能になる」と期待していると言う。
ミガルのダビド・ジグドンCEOは「ヒトコロナウイルス用ワクチンの開発が世界的急務となっており、開発加速に全力を尽くす」と語った。「8~10週間で開発、90日で安全基準をクリアしたい。一般市民が利用しやすい経口ワクチンになるだろう。臨床試験を加速させ、最終製品開発と認可手続きを促進するべく、パートナーと集中協議している」
イスラエルのオフィル・アクニス科学技術・宇宙相は、「これを突破口に開発が急速に進み、COVID-19の深刻な脅威に対応可能になるはずだ」と研究チームをたたえた。
米ジョンズ・ホプキンズ大学医療安全センターのアメシュ・アダルジャ上級研究員によれば、鳥用ワクチンのヒトコロナウイルスへの適用は可能だ。「有効かつ安全と証明されれば、鳥用ワクチンの製造設備を利用し急ピッチでの量産が可能」だが、「問題は臨床試験を迅速に実施して有効性を証明し、規制当局の認可を確実に得ることだ」と言う。
バイオ企業や医薬品大手も
ミガルの発表は、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長が「ヒト用ワクチンの実用化には最低でも1年~1年半かかる」と語った翌日のことだった。ファウチが1月下旬に明らかにしたように、NIAIDの新たな研究チームも3カ月でヒトでの予備試験を実施し、ワクチン開発の記録更新を目指している。
イギリス、中国、ドイツ、ロシア、オーストラリアの研究機関、アメリカのイノビオやモデルナなどバイオ企業や医薬品大手ジョンソン・エンド・ジョンソンなどもワクチン開発に乗り出している。
だがワクチン開発には何年もかかる可能性がある。SARS(2002年出現)とMERS(12年)のワクチンは未開発。エボラ出血熱の場合は初の症例確認から43年後の19年12月にようやく認可された。
アダルジャは1月、ワクチンの開発が加速していることから、「数カ月」で第1段階の臨床試験開始もあり得ると語った。ワクチンを開発するには感染を防ぐ免疫反応を促進する的確な標的を突き止める必要があると、アリゾナ州立大学のウイルス学者ブレンダ・ホーグ教授は言う。
「ワクチンのプラットフォーム候補を特定したら研究開発に入る。安全・品質・有効性の要件をクリアした後、動物実験を含む前臨床試験を行い、ようやく臨床試験に進む。ヒトでの臨床試験は普通4段階で、さらに安全性・有効性・投与量を評価する」
ホーグによれば「通常ワクチンの開発・認可には何年もかかる」が、「既にSARSとMERSのワクチン開発は相当進んでいる。COVID-19用ワクチン開発の手引きとなり、開発促進にも役立つはずだ」
<2020年3月17日号「感染症vs人類」より>
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2020年3月17日号(3月10日発売)は「感染症VS人類」特集。ペスト、スペイン風邪、エボラ出血熱......。「見えない敵」との戦いの歴史に学ぶ新型コロナウイルスへの対処法。世界は、日本は、いま何をすべきか。