徹底したウイルス対策実施のシンガポール 他国が真似できない内容とは
豊富な資金
シンガポールの徹底した対応は、2003-04年のSARS(重症急性呼吸器症候群)での経験による面もある。同国の死者数は30人を超え、中国本土以外では最も多い部類の一つだった。
シンガポールは今月、最初に中国への渡航禁止を打ち出した国の1つでもある。中国はシンガポールにとって最大の貿易相手国であり、観光客数でも中国人が最も多いことから、渡航禁止は経済的な痛手が大きい。シンガポールの首相は既に、新型ウイルス流行で景気後退に陥る恐れがあると警告している。
しかしシンガポールには十分な資金がある。アジアで最も富裕な国で、国民1人当たりの名目GDP(国民総生産)は世界の上位10カ国に入る。18日には新型ウイルスの封じ込めと景気下支えのためとして、年度予算で45億ドル(約5040億円)の対策費を発表した。
シンガポールの対応にはミスも幾つかあった。政府が2週間前に新型ウイルスの警戒レベルを引き上げ、コメや麺やトイレットペーパーなど生活必需品の買いだめパニックを引き起こしたことでは、政府は「誤解が生じた」としている。
シンガポール流の方法は持続できるものではないかもしれない。流行がもっと深刻化すればなおさらだ。
WHOが調整役を務める「地球規模感染症に対する警戒と対応ネットワーク(GOARN)」を率いるデール・フィッシャー氏は「今やっていることをいつまでも続けることはできない。緊急でない手術だからといってすべてを中止にし続けることはできないし、休日に出掛けるのを一切合切禁止することもできない」と指摘。「最終的には少し緩めざるを得ないだろう」との見方を示した。
冒頭のキムさんには海外にいる家族から定期的に、安全を確保してほしいとの電子メールが届く。しかし、当局の対応はキムさんに安心感を与えている。「家族は絶対に心配しているけれど、シンガポールの対応はとても良くて、新しい対応や政策はとても理にかなっているように見えると伝えて、家族を安心させている」という。
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