最新記事

韓国

韓国で集団感染を起こした新興宗教団体は、今最も警戒される教団だった

2020年2月25日(火)17時00分
佐々木和義

既存教会が警鐘を鳴らすのはその布教活動だ。5万人から10万人といわれる布教訓練を受けた信者は、既存教会に侵入し、信者を誘惑して刈り入れる。牧師を追放して教会ごと乗っ取ることもある。また無料英語教習所や予備校で布教活動を行ない、職業軍人にも対象を広げている。

新天地ソウル教会は、すべての施設を閉鎖し活動を休止したと釈明するが、プロテスタント教会は感染した信者が既存教会を訪問する可能性を警戒する。布教訓練を受けた信者らが侵入している既存教会の日曜礼拝への参加を休止すると「刈り入れ屋」という疑惑が生じるため、活動を継続するだろうという危惧だ。

大邱カトリック大学病院の看護士は、陽性判定を受けるまで新天地教信者という事実を隠して勤務していた。
陸軍と空軍でも新型コロナウイルス感染症が確認されたが、陸軍大尉は大邱在住のガールフレンドが新天地教会の信者だった。

感染したときの周囲からの非難をもっとも恐れる

診断拒否もまた感染拡大をもたらしている。交通事故で大邱の病院に入院した女性に肺炎が疑われる症状がみられた8日以降、病院は2度に渡って検査が可能な病院に移るよう勧告したが、患者は感染する理由がないとしてこれを拒絶した。症状が悪化した17日にようやく保健所で検査を受け、感染が明らかになった。

ソウル大保健大学院が世論調査会社に依頼して行った調査で、自身が感染する可能性が高いと考えた回答者は12.7%に過ぎなかった。新型コロナウイルスで何が最も怖いかという設問に対し、感染したときの周囲からの非難という回答が最も多かった、自身の感染や身近な人の感染より、自分が感染したとき人に知られることを恐れているのである。

医療機関は感染者の来訪を恐れ、呼吸器患者の診察を躊躇する。隔離病棟で感染者に対応した京畿道始興市の総合病院は売上が50%落ち込んだ。予約のキャンセルや予約した日に訪問しない患者も増えている。

「感染病の予防及び管理に関する法律」は、保険福祉部長官、知事、市区長など1級感染が疑われる患者に調査や診察を受けさせる義務を規定し、拒否した人は300万ウォン(約28万円)以下の罰金が科せられるが、医療スタッフの勧告には適用されない。感染の疑いがあっても患者が検査を拒否する場合、打つ手がない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防

ワールド

アングル:トランプ氏のカナダ併合発言は「陽動作戦」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中