韓国と中国の関係に影を落としはじめた新型コロナウイルス
韓国LCC、中国路線が運休に追い込まれた
韓国LCC(格安航空会社)も大きな被害を受けている。2019年7月から広がったボイコットジャパンで日本線利用者が激減し、代替した中国路線が運休に追い込まれたのだ。業界1位のチェジュ航空は韓国と中国を結ぶ6路線を運休し、日本路線等への代替を検討する。2位のティーウェイ航空は全社員を対象に希望休職の実施を決定した。
エアプサンは中国5路線の運航を停止して日本や東南アジア、韓国済州島に振り分ける計画で、運休予定だった釜山と札幌を結ぶ路線を延長するなど、代替路線の確保に乗り出した。
釜山港は特需に一喜一憂する。上海や寧波など中国の港湾が機能を喪失し、中国内陸部に運ぶコンテナが集まっているのだ。荷物を一時的に保管する蔵置率は60%台が適正だが、3つの埠頭が飽和状態とされる80%を超え、他の埠頭も飽和状態に迫っている。釜山港に着岸するコンテナ船の荷役は通常入港から1日程度だが、3日から4日ほど沖で待機する船も現れた。荷役料と保管料など港湾の収益が増える反面、蔵置率の増加で業務効率が悪化し、処理する速度が落ちている。
文在寅政権は対中政策の見直しを迫られている
新型コロナウイルスは韓国と中国の関係にも影響を及ぼす可能性を孕んでいる。2月5日、中国外交部の華春瑩報道官は、定例記者会見で物品を支援した21か国とユニセフに謝意を述べた。最初に韓国を挙げたが、前日4日の質疑で述べた日本に対する「心からの感謝」と温度差があるというのだ。嫌中に傾く人々は政府や企業が送った支援は日本より韓国の方が多いと指摘する。
文在寅大統領は、2019年12月に中国・北京で習近平中国国家主席と行なった首脳会談の席上で20年上半期の訪韓を要請し、習主席も積極的に検討すると答えていた。
青瓦台(大統領府)と与党は習主席の訪韓が2017年に在韓米軍が高高度防衛ミサイル(THAAD)を配備して以後、冷え切っていた両国の関係改善に繋がると期待し、4月15日の総選挙の前、特に訪日に先立つ韓国訪問を求めて調整を続けてきた。
しかし、青瓦台に提起された中国人入国禁止への賛同者は70万人に迫る勢いで、日本政府による輸出管理強化への対応を求める請願の4万6千人余と比べてもまさに桁違いなのである。嫌中の広がりで習近平主席の早期訪韓が難しくなり、中国との関係重視を表明してきた文在寅政権は対中政策の見直しを迫られている。