最新記事

軍事

ロシアに先を越された極超音速兵器の開発急ぐアメリカ

The Pentagon Invests in New Weapon to Defeat Russia’s Hypersonic Missiles.

2020年2月6日(木)17時55分
トム・オコナー

極超音速の滑空弾頭を迎え撃つグライド・ブレイカー(右、想像図) DEFENSE ADVANCED RESEARCH PROJECTS AGENCY

<ロシアと中国に音速の5倍で飛ぶ極超音速ミサイル配備で先を越されたアメリカは、極超音速の迎撃を目指すが>

米国防総省は極超音速ミサイルを迎撃できる防衛システムの開発を加速させるため、大手軍事企業と新たな契約を結んだ。軍事力の増強を進めるロシアは既に「あらゆるミサイル防衛網を突破できる」と称する極超音速の新型ミサイルを実戦配備している。

米国防総省の下部機関、防衛先端技術計画局(DARPA)は1月28日、航空宇宙・防衛大手ノースロップ・グラマンが進める「グライド・ブレイカー」開発計画に130億ドルを提供する契約を結んだ。DARPAによればこの計画は、「極超音速システムに対する防衛技術を開発・実証するため」2018年に始まった。新契約は迎撃能力を獲得するための投資だと、国防総省は述べている。


「この契約により、極超音速システムに対する高度な迎撃能力の獲得に不可欠な研究開発および実証が可能になる」と、国防総省は声明で説明した。

極超音速とはマッハ5、つまり音速の5倍以上の速度のこと。中国とロシアは既に極超音速ミサイルの配備を発表しているが、アメリカは攻撃と防衛いずれも極超音速兵器を保有しておらず、開発を急いでいる。

さらに先へ進むロシア

その間にもロシアは攻撃用に加え、防衛のための極超音速兵器も備えていると報道されている。ロシア国営コングロマリット・ロステック傘下のKBPインストルメント・デザイン・ビューローの航空防衛システム部門主任デザイナー、バレリー・スルーギンは1月29日、ロシア国営タス通信に、地対空ミサイルと機関砲を併せ持つ近距離対空防御システム、パーンツィリSに、新たに極超音速性能が加わったと語った。

「あらゆる射程の敵を迎撃できるミサイルが2つある。1つは標準型で、もう1つは最近開発された極超音速だ。マッハ5以上の速度を出せる。しかも、今までのように弾頭に大量の爆薬を詰め込む必要がない。衝突時の速度が速いので、破片の拡散効率は放っておいても高いからだ」

パーンツィリS(NATOは「SA20グレイハウンド」のコードネームで呼んでいる)はミサイルと航空機を迎撃できるよう設計されている。ロシア国内に加えて国外にも配備され、シリアでは武装勢力の攻撃を無効化し「その威力を証明できた」と、スルーギンは言う。

スルーギンによれば、パーンツィリは巡航・弾道ミサイルはもちろん、極超音速兵器をも迎撃できる。いずれは対艦用に使うことも可能で、将来的にはより小型のミサイルに搭載してミニドローンを攻撃させることもできるとスルーギンは言う。

<参考記事>ロシアが誇る「無敵」核兵器をアメリカは撃ち落とせない
<参考記事>ロシアの核魚雷が起こす「放射性津波」の恐怖

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中