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習近平緊急会議の背後に「武漢赤十字会の金銭癒着」

2020年2月4日(火)11時55分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

北京の新京報網によれば、このイベントは「不妊治療」に関するもので、湖北省赤十字会と、このたびマスク1.6万個(のちに1.8万個と訂正)が配られた武漢の仁愛医院および天祐医院は、湖北省の不妊治療イベントで多くの資金を提供したという。

おまけに湖北省赤十字会の会長は湖北省の副省長で、金にまみれた背後関係がうごめいている。湖北省政府と武漢政府は赤十字会を通して美容整形や不妊治療あるいは性病治療などの分野で仁愛医院と天祐医院の二つの民間医院と金でつながった関係にあった。そこにはさらに別のマスク製造民間企業との持ち株などに関する利害関係が複雑に絡んでいる。

習近平が緊急会議!

武漢赤十字会の、あまりに驚くべき実態にネットが炎上しているため、北京にある中国赤十字会の代表団が2月1日、武漢を視察した。人民網やその傘下の環球時報の電子版である環球網などが伝えている。

しかし、そのようなことで事態が収まるはずがない。

2月3日、習近平・中共中央総書記をトップとする「チャイナ・セブン」(中共中央政治局常務委員会委員7人)は会議を開催し、新型コロナウイルス肺炎に対する中央の領導小組(指導グループ)から事情を聴取し、現況に関する討議を行った。*注記(文末)

その結果、習近平は厳しく現状を批判し、概ね次のように述べている。

――このたびの感染は我が国の統治システムと能力に対する大きな試練だ。対応策の中で露呈した数々の弱点を改善しなければならない。経験から教訓を学び、一層の検証を行い改善せよ!

これに関して例えば「北京共同」が「初動対応の遅れに対する国民の強い不満を無視できなくなったとみられる」と書いているためなのか、日本メディアは一斉に、あたかも「習近平が謝罪した」ようなことを報道しているが、原文のどこに「初動の遅れ」や「謝罪」などと書いているだろうか。

この緊急会議は武漢赤十字会のスキャンダルに対して緊急開催されたものである。

だから日本の報道は「なぜか、突如」と、その理由が分からず「きっと初動対応が遅れたからなのだろう」と推測しているだけで、一つ一つのファクトの検証を行っていないように思われる。

そのようなことをしていたら、「習近平を国賓として招聘すること」同様、それが如何に間違った選択であるかを判断する力をも鈍化させる。注意を喚起したい。

*注記:長すぎるので控えたが、習近平は特に「中でも湖北省と武漢は重点中の重点だ」とも述べ、「医療防護物資の供給を保障せよ」と強調している。さらにまったく「謝罪」とは無関係である証拠に「今年の経済社会発展の目標達成に努力せよ」とも檄を飛ばしている。日本は一律「自分が見たい方向」にニュアンスを勝手に変えて報道している。「希望的観測」という主観で客観的事実を捻じ曲げると真実は見えなくなる。それは結果的に日本の国益を損ねる。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

Endo_Tahara_book.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』(遠藤誉・田原総一朗 1月末出版、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(11月9日出版、毎日新聞出版 )『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

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