最新記事

テクノロジー

3年前に亡くなった7歳の娘と「再会」 韓国、VRを使ったテレビ特番が賛否呼ぶ

進化したVRは、自閉症の人びとや家族を亡くした人のためのメンタルケアに使われだしている。写真は韓国MBCのVRヒューマンドキュメンタリー「あなたに会えた」 MBClife / YouTube

<テクノロジーの発達で、VRはエンターテインメントの世界から、人びとの心のケアにも活躍しはじめている>

ヘッドセットとゴーグルを付け、誰でも簡単に仮想現実の世界へ入って行けるVR。いまやその技術はエンターテインメントにとどまらず、様々な場面で活かされている。

先日、画期的な実験が報道され話題となった。イギリス・ニューカッスル大学の専門家チームとThird Eye Neuro Tech社とが共同で開発したVR「Blue Room」は、自閉症の人が現実世界で感じる不安を改善させることに成功した。VRの中で様々なことを事前に体験することによって、こだわりが強く少しでも予想していないことに恐怖心をもちやすい自閉症の人の不安を解消することに役立つのだという。

また、日本でも昨年の世界自閉症啓発デーには、福岡県で市民らにVRを用いた自閉スペクトラム症をもつ人特有の視覚現象を体験し、どのように見たり聞こえたりしているか理解するイベントを行った。先月17日には茨城県つくば市内でも45校の小中学校の特別支援教育コーディネーターを集め、同様の疑似体験をする催しも行われている。

このようにVRは活躍の場をどんどんと広げている。お隣の国、韓国では先日VRの新たな試みを放送し、多くの視聴者の感動を呼んだとして話題となった。

VRで3年前に亡くなった娘と「再会」

今月6日韓国で放送された「MBCスペシャル特集-VRヒューマンドキュメンタリー"あなたに会えた"」は、放送終了後から大きな反響を呼んだ。SNSや動画サイトでもすぐにアップロードされ拡散されたため、もしかしたらご存知の人もいるかもしれない。

番組の内容は、2016年に3年前に血球貪食性リンパ組織球症(hemophagocytic lymphohistiocytosis:通称HLH)を発症し、7歳で亡くなってしまったカン・ナヨンちゃんとその家族、主に母親との再会の話だ。

ナヨンちゃんは発症後、ただの風邪だと思い病院を受診したところ、難病が発覚し入院。その後たった1カ月で帰らぬ人となってしまった。家族は3年以上たった今でもナヨンちゃんの事を思い続け悲しみに暮れている。そんな家族を少しでも救えるのではないかと、MBC放送局はVR業界韓国内最大手である「VIVEスタジオ」社と手を組み、ナヨンちゃんと母親を仮想現実の中で再会させる計画を開始した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏、貿易摩擦・債務・市場乱高下が主要リスク=

ワールド

トランプ氏、新たな戦闘機「F55」開発と「F22」

ワールド

イスラエルのガザ攻撃続く、60人死亡 トランプ歴訪

ワールド

インド、関税ゼロの通商協定を米に提示=トランプ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 3
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 4
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 5
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 6
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 9
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 10
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中