イラン対米ミサイル攻撃、犠牲者ゼロの理由 米兵救った謎の「事前警告」とは?
事前情報なしには犠牲者防げず
では一体、事前の警告を流したのは誰なのか。
「もちろん、イランだ」とこの補佐官は言う。「イランは、攻撃が実施される前に米国・イラク双方が気づくことを強く求めていた」。ロイターでは、この補佐官の証言の裏付けをとることができなかった。
これについて、イラン外務省はコメントを拒否しており、ニューヨークのイラン国連代表部にもコメントを求めたが回答は得られなかった。イラク首相府、イラク軍報道官もコメントの要請に応じていない。米連邦政府もコメントを拒否した。
イラク軍の発表によれば、イランは、米軍も駐留するアル・アサド基地とイラン北部のクルド人都市アルビールに近い別の基地を狙って、少なくとも22発のミサイルを発射した。人命を救うための準備には事前の警告が不可欠だったことが分かっている。
ミサイル着弾、現場大きな損害
13日、イラク西部のアンバール砂漠に広がるアル・アサド基地では、米空軍・陸軍のチームが、飛行場や周囲の掩蔽壕の周囲に山積する金属やコンクリートの残骸を、ブルドーザーとピックアップトラックを使って片付けていた。
巡航ミサイル1発が、コンクリート製の重い耐爆壁を10カ所以上崩壊させ、米兵の居住棟として使われていた輸送用コンテナを全焼させた。もう1発は、通常「ブラックホーク」攻撃ヘリを収容している格納庫2棟を破壊し、近くの事務所を吹き飛ばし、備蓄された燃料は何時間も燃え続けた、と米兵らは語る。
「この駐機場に着弾したとき、自分は爆発地点から60メートル離れた場所にいた」と米空軍のトミー・コールドウェル3等軍曹は言う。「ロケット弾ではなく、ミサイルが実際に着弾したのはこれが初めてだ。損害は(ロケット弾の場合に比べ)かなり大きい」。
「十分に備えはできていた」
基地の将校によれば、ミサイルが着弾した日の深夜までには、この基地が攻撃を受けることは明らかになっていたという。ほとんどの人員は掩蔽壕に移動し、航空機も駐機場や修理拠点から待避したという。
「ミサイル攻撃があるだろう、恐らくアル・アサド基地が標的になる、という情報を受け取っていた」と米陸軍のアンティオネット・チェイス中佐は言う。「十分に備えはできていた。10日前には、同様の攻撃に対する訓練を行っていた」
だが有志連合軍の部隊は、今回の攻撃が彼らに命中しなかったのは、イランの自制心の表れだと話している。米空軍将校の1人が言うように、「連日24時間体制で航空機のメンテナンスを行っている空軍基地にミサイルを撃ち込めば、恐らく人命を奪うことになる」のである。
(翻訳:エァクレーレン)
[アル・アサド空軍基地(イラク) ロイター]
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