イラン軍司令官を殺しておいて本当の理由を説明しようとしないトランプは反アメリカ的
The Trump Administration Is Barely Trying to Explain the Iran Strike
時系列はやや曖昧だが、APの報道によれば、米政府はドローン攻撃を「法的に正当化」するため、「スレイマニがアメリカの外交官を攻撃する計画の最終調整のために中東に向かうという諜報を提出する」準備をしていた。だがその準備が整う前に、トランプはスレイマニ殺害を最終決定し命令を出してしまったという。
報道陣や議員からは、この諜報がどれぐらい確かなものだったのか、またその脅威がどれだけ差し迫ったものだったのかを疑問視する声が上がっている。マーク・ミリー統合参謀本部議長も、スレイマニが死んでも、問題の攻撃が「実行される可能性はまだある」と認めている。
今回のトランプ政権の説明は、誤った情報を根拠にイラク戦争開戦に踏み切ったジョージ・W・ブッシュ政権の嘘よりもひどい。イラク戦争に例えるなら、米軍がイラクに侵攻した「翌日」に、サダム・フセインが大量破壊兵器を開発していたと言い始めたようなものだ。
「悪党をひとり排除した」
いずれにせよ、トランプはスレイマニ殺害の翌日には「自衛」という見え透いたウソを翻し、「彼らが攻撃をしてきたから、我々は報復した」という広い意味の「報復」論とすり替えてツイートした。同時に、スレイマニがイラクで複数の米兵を殺したと非難するツイート(これは正しい)や、彼がベンガジの攻撃を指揮したとするツイート(これは誤り)をリツイートした。
もちろん、以前からアメリカがスレイマニを脅威と見なしてきたのは事実だ。だがブッシュもオバマも、そしてトランプ自身も、12月末までは、スレイマニは生かしておくより殺した場合のリスクの方が大きいと考えていた。
トランプの側近のスレイマニ殺害についての言い分は詰まるところ、ポンペオ国務長官が言うように「戦場から悪党をひとり排除した」というぐらい単純なのだろう。ある国務省関係者は非公開の会見で記者団に言ったという。「我々には自分たちの行動の理由を説明する義務などない」
問題は、今回のように軍事的な緊張が高まっているなかでは、攻撃の動機が誤って解釈される事態も避けられないということだ。もしも今回のドローン攻撃が本当に自衛のために行われたのなら、トランプ政権はその証拠を提示しなければならない。もしもトランプが何であれスレイマニ殺害を正当なものと確信しているなら、その根拠を示すべきだ。