トランプのクリスマスカードに、弾劾「弁解」の異例の手紙が入っていた
クリスマスカードに記された2つの反論
ここで、この重要なクリスマスカードの書簡をいくつかの点から見てみよう。
まず、トランプは自分がジョー・バイデン(民主党の2020年大統領選の主要候補)の捜査をウクライナのゼレンスキー大統領に要求した件について、「do us a favor(われわれのために)」と言った、と主張している。
「do me a favor(私のために)」とは言っておらず、「me」ではなく「us」を使ったのは、ウクライナに捜査を要求したのはアメリカの国益のためで、すなわち権力の乱用ではないからだという理屈である。
トランプのウクライナ疑惑をめぐる下院の弾劾訴追条項は「権力乱用」と「議会妨害」の2つに絞られており、これは前者に対する弁解となる。
条項の2つ目の「議会妨害」についても、弾劾調査に協力しないのは「憲法に基づく大統領の特権だ」とストレートに反論している。また、トランプは民主党が当初から自分の大統領就任を認めようとせず、何が何でも弾劾するつもりだった、と訴えている。
ずっと前からトランプを外したい民主党議員がいたことは否めない。この点でトランプは上院でいくぶんかは同情を買えるだろう。ただ、議会の召喚を一律に無視できる大統領特権など存在しないので、この点は支持されにくい。
「me対us」の件に戻れば、「do us a favor」のフレーズでウクライナに要求した捜査は国のためだったという理屈は上院議員の一部に受け入れられるかもしれない。ただ、これは例えば、調査がゼレンスキー大統領のホワイトハウス訪問の交換条件だったという駐EU米大使ソンドランドの証言とバッティングしている。トランプが自分自身の利益のために動いたことはもはや疑いの余地はない。
怒りと不満に満ちたこの長文の書簡には、すべて大文字の語(叫んでいるかのようで品がなく、公式書簡にはまず見られない)や感嘆符(ビックリマーク)が含まれていた。例えば、「(ペロシ氏よ)貴女は『トランプ発狂症候群』と呼ばれてきたものにかかっている!」とか、「貴女は民主主義を敵と見なしている!」といったくだりがそうだ。
書簡ではまた、ロシア疑惑に絡んでトランプが解任した前FBI長官のジェームズ・コミーを「米国史上最も汚い警官のひとり」として罵っている。さらには、別の人物を引用している箇所で、放送禁止用語までもが含まれていた。書簡というよりは巨大なツイート、といったところだ。