最新記事

疑惑

サウジ皇太子、アマゾンCEOベゾスのiPhoneをハッキング? 殺害事件と関連か

2020年1月23日(木)11時40分

国連の特別報告者は、ジェフ・ベゾス氏(写真)の携帯電話がハッキングされた問題で、サウジのサルマン皇太子が関与した可能性を示す情報を入手したと明らかにした。写真はワシントンで2018年9月撮影(2020年 ロイター/Joshua Roberts)

国連の特別報告者2人は22日、米アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏の携帯電話が2018年にハッキングされた問題で、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が関与した可能性を示す情報を入手したとし、米国など関係当局に早急に捜査するよう求めた。

2人はアニエス・カラマール氏(超法規的処刑問題担当)とデービッド・ケイ氏(表現の自由担当)。特別報告者は国連から独立した立場で調査を行い、国連人権理事会に報告する。

捜査要請に法的拘束力はなく、米当局が速やかに要請に応じるかどうかは不明。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、米連邦捜査局(FBI)が同ハッキング問題について捜査を進めていると報じた。FBIはコメントを控えた。

特別報告者は捜査を要請する根拠として、米国を拠点とするFTIコンサルティングによる調査報告を挙げた。報告は、ベゾス氏のスマートフォン「iPhone X」が、サルマン皇太子のワッツアップのアカウントから18年5月1日に送られた悪意ある動画ファイルを通じてハッキングされたとしており、この調査結果は「中程度から高度の信ぴょう性」があると結論づけている。

調査報告の内容は最初に、ニュースサイト「マザーボード」によって報じられた。報告によると、この動画ファイルを受信してから数時間後にスマホの動きが極端に変わり、発信データが300倍近くに膨れたという。

FTIコンサルティングは調査の詳細に関する問い合わせに応じていない。

数カ月後にはカショギ氏殺害事件

ハッキングはベゾス氏が所有する米紙ワシントン・ポストのコラムニストでサルマン皇太子に批判的だったサウジの著名記者ジャマル・カショギ氏が18年10月に殺害される数カ月前に起こったとされている。

サウジのファイサル外相はスイスのダボスでロイターの取材に応じ、サルマン皇太子の関与を否定。「皇太子がベゾス氏の電話をハッキングすると考えるのは全くばかげている」と述べた。

在米サウジ大使館はツイッターへの投稿で「すべての事実を明確にするよう、調査を求める」とした。

ベゾス氏はツイッターでカショギ氏の葬儀に出席した際の自身の写真を掲載し「ジャマル」とだけ記した。

国連報告者はハッキングで使われた技術を特定していないが、イスラエルのNSOグループあるいはイタリアのスパイウエア会社「ハッキング・チーム」のソフトが使われた可能性があるとしている。

NSOは自社のソフトが使われた可能性を否定した。

不倫報道との絡みは不明

タブロイド紙「ザ・ナショナル・エンクワイアラー」は昨年1月にベゾス氏と不倫関係にあるとする元テレビキャスターが交わしたテキストメッセージを報じており、3月にベゾス氏のセキュリティー担当責任者は、サウジ政府がメッセージを提供したと述べていた。今回明らかになったハッキング疑惑を受け、テキストメッセージが同紙に漏れた経緯に一段と注目が集まるとみられる。

サルマン皇太子のハッキングへの関与は、英紙ガーディアンが最初に報じた。

[サンフランシスコ/ワシントン ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20200128issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年1月28日号(1月21日発売)は「CIAが読み解くイラン危機」特集。危機の根源は米ソの冷戦構造と米主導のクーデター。衝突を運命づけられた両国と中東の未来は? 元CIA工作員が歴史と戦略から読み解きます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トルコ製造業PMI、4月は50割れ 新規受注と生産

ビジネス

焦点:米国市場、FOMC後も動揺続く恐れ 指標の注

ビジネス

住商、マダガスカルのニッケル事業で減損 あらゆる選

ビジネス

肥満症薬のノボ・ノルディスク、需要急増で業績見通し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中