最新記事

イラン

トランプが52カ所攻撃するなら、イランは300カ所攻撃する

Trump Threatens To Attack 52 Sites If Iran Retaliates To Death Of Military Leader

2020年1月6日(月)16時00分
アーサー・ビラサンタ

米軍に殺害されたイラン革命防衛隊スレイマニ司令官の葬儀に集まった人々(2020年1月6日)  Hossein Mersadi/Fars news agency/WANA

<米軍による司令官殺害に対して報復を誓うイランに対し、トランプはアメリカを攻撃したら文化遺産を含む52カ所を徹底攻撃すると「戦争犯罪」実行を宣言>

ドナルド・トランプ大統領とマイク・ポンペオ国務長官がイランに対する威嚇をエスカレートさせる一方で、奇妙な沈黙を続けているのが米国防総省だ。

トランプは1月4日、米軍によるイラン革命防衛隊のカッセム・スレイマニ司令官殺害にイランが報復した場合、アメリカはイランの民間施設、文化施設、軍事関連施設の計52カ所を攻撃すること、そして米軍が攻撃目標のリストをまとめたことを明らかにした。翌日ポンペオは、標的リストには、イランの高官と軍幹部が含まれていると付け加えた。

軍事アナリストらの指摘によれば、トランプ政権がイランに対して越えてはならない一線を示したのはこれが初めてだ。

国防総省は実際に52の標的リストを作成したのか、トランプが適当な数字をでっち上げてはったりをかましているだけなのか、憶測は尽きない。トランプによると、52という数字は1979年に起きたテヘランの米大使館占拠事件で人質にとられたアメリカ人の人質の数を表しているという。

「これは警告だ。イランがアメリカ人、またはアメリカの資産を攻撃した場合、アメリカはイランとイランの文化にとってきわめて重要な52カ所に対して迅速に、そして非常に激しい攻撃を加える。アメリカはこれ以上、脅しを受けない!」と、トランプはツイートした。

中東のすべての米軍基地は射程内

トランプのこうした発言に対して、「ばかげている」とイランの最高指導者アヤトラ・ハメネイ師の軍事顧問ホセイン・デフガンはCNNに語った。イランの報復は「軍事施設を対象とする軍事的なものになる」と述べた。

イランの文化財を攻撃するというトランプの脅しをアメリカが実行するなら、「米軍の人員、アメリカの政治拠点、アメリカの軍事基地、アメリカの船舶はすべて安全ではなくなる」と、デフガンは語った。「トランプが52カ所と言うなら、こちらは300カ所を攻撃する。すべてわれわれの射程内にある」

イランの有識者らは中東のすべての米軍基地がイランあるいはイランと関係がある民兵組織のミサイルの範囲内にあることを以前から指摘している。デフガンは、文化的な拠点への攻撃は国連によって戦争犯罪と見なされているとも語った。

<参考記事>軍事力は世界14位、報復を誓うイラン軍の本当の実力

国連安全保障理事会は、文化遺産を攻撃目標にすることを禁止しており、文化遺産とその保護に焦点をあてた2017年の決議で「宗教的遺跡や遺物の破壊を含む、文化遺産の違法な破壊を非難する」と明確に宣言した。アメリカも署名したこの決議は、2014年と2015年にIS(イスラム国)がシリアとイラクの主要な歴史的・文化的遺跡を破壊したことを非難するために採択された。

文化的な場所を標的とする軍司作戦は、文化の保護を目的とする1954年のハーグ条約にも違反する戦争犯罪だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック上昇、トランプ関税

ワールド

USTR、一部の国に対する一律関税案策定 20%下

ビジネス

米自動車販売、第1四半期は増加 トランプ関税控えS

ビジネス

NY外為市場=円が上昇、米「相互関税」への警戒で安
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中