2020年の世界経済が抱える4つの時限爆弾
A Rosy Outlook, But With Big Downside Risks
中国経済の未来についてはさらに大きな懸念がある。中国は今後も世界経済との深い結び付きを維持するのか、それとも他地域との経済的相互依存関係を解消する試みを強化するのか。
「唯一の、そして大いなる懸念は米中が離れることだ」と言うのは、コンサルティング会社ユーラシア・グループのクリフ・カプチャン会長だ。「両国がたもとを分かつことは、少なくとも技術分野では避けられない。さらにそれがエスカレートすると、関税を武器にすることが常態化し、他の国を対立に巻き込み、経済成長の本格的な障害となる恐れが出てくる」
それは単なるトランプ効果の問題ではない。カプチャンの言う米中関係の「硬直化」は、現在、米政治における既定路線となり、議員や民主党の大統領候補者はみな中国に対してより厳しい姿勢を取ろうとしている。「それは世界経済と世界の安定に対する真の脅威だ」と彼は言う。
中国は貿易相手国から部品などを調達するのをやめて、代わりに国内で主要産業のサプライチェーンを構築しようとしている。その先頭を走るのが華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)だ。
しかも中国政府は、こうした保護政策を全産業に広げようとしている。そうなると世界経済の見取り図は大きく変わるだろう。「指導者が相互依存を根底から見直すことが中国経済の未来にとって何を意味するか。それが大きな疑問だ」と、ハーバード大学のゲワーツは言う。
このような動きは大規模な国家資本主義を伴い、主要産業における国内サプライヤーの育成やグローバルなサプライチェーンの解体、産業政策の強化につながる。またアメリカ製ミサイル配備の件で韓国を牽制したり、ツイッターで香港デモを支持したNBAを脅すなど、経済的な圧迫による他国への攻撃も増えるだろう。そしてアメリカの金融支配からの脱却を図るこれまでの中国の取り組みも活性化する。
「トップダウンで動く国が、商品からテクノロジー(潜在的には金融)に至る複数の領域で自立性を高める必要があると判断した場合、それは2020年に非常に大きな変化をもたらすだろう」とゲワーツは言う。「そうなったら、以前からの懸念が現実のものになる」
債務残高
先進国でも途上国でも企業や家計、国家の抱える債務が途方もなく膨らんでいる。多くの国の中央銀行による過剰な金融緩和がその一因だ。既に金利を下げてしまった各国は、また新たな債務問題に直面したとき、衝撃を和らげるための余裕を欠く。