最新記事

環境

トランプが「現代のドン・キホーテ」と嘲笑される理由

Internet Compares Donald Trump to Don Quixote's Fear of Windmills

2019年12月25日(水)18時00分
ベンジャミン・フィアナウ

風車を巨人と思い込み突進するドン・キホーテ。現代のドン(トランプ)も風車叩きに余念がない aluxum/iStock.

<それは文字通り、無害な「風車」を敵として突進するところがそっくりだから。石油会社の利益を損なう風力発電をつぶすため、トランプは風力発電所は鳥の墓場で癌も引き起こすと嘘八百>

ドナルド・トランプ大統領のコメントがまたソーシャルメディアで嘲笑の的になっている、12月21日に行われた米保守派団体ターニング・ポイントUSAの会議で、トランプは風力発電のことは「まったく理解できない」と述べ、インターネットにはトランプを風車と闘うドン・キホーテになぞらえる投稿が相次いだ。

この会議で、トランプは風力発電を「音がうるさい」と批判し、風車と衝突して「鳥が殺される」事故が多発していると「弊害」を語った。

トランプと、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はともに風力発電を繰り返し批判しており、その根拠として風車との衝突で年に何万羽もの鳥が死んでいること、そのなかにはアメリカの国鳥ハクトウワシも含まれていること、そして風車の音が癌の原因になるとも主張している(癌の原因説は誤りと証明されている)。

この発言に、文学を愛するツイッターユーザーから投稿が相次いだ。風力エネルギーについてまったく理解していないことを認めたトランプは、スペインのミゲル・ド・セルバンテスの名作『ドン・キホーテ』の主人公にそっくりだ、というのだ。

架空の敵を攻撃

ドン・キホーテと忠実な従者のサンチョ・パンザの冒険を描いたこの1605年の小説のなかで、ドン・キホーテは、初めて見る風車を巨人と思い込んで闘いを挑む。そこに登場する「風車を槍で突く」という有名なフレーズは、翻って無益な戦いを意味する慣用表現になった。

現実と空想の区別がつかなくなったドン・キホーテは、風車を「巨人」だと言い張り、その翼を「長い腕」と間違える。

「ドン・キホーテ大統領が風力発電に反対しているのは鳥のためではなく、風力発電が石油会社の利益を損なうからだ。すべてたわごとにすぎない」と、「ブルックリン・パパ・ディファイアント」と名乗るツィッター・ユーザーは、再生可能エネルギーを罵倒するトランプの暴言についての本誌にコメントを寄せた。

「風車を敵に回した現代のドン(ドナルド)は、ドン・キホーテよりクレイジーだ」と、俳優のケン・オリンもツイートした。他のツィッターやフェイスブック・ユーザーは、マイク・ペンス副大統領はさしずめサンチョ・パンザだと指摘した。

<参考記事>トランプは石炭の雇用を取り戻せない──嘘に気づき始めた労働者たち
<参考記事>トランプ、想像を絶する環境敵視政策が始まった──排ガス規制の米EPAに予算削減要求とかん口令

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノルウェー・エクイノール、再生エネ部門で20%人員

ワールド

ロシア・イラク首脳が電話会談 OPECプラスの協調

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を

ビジネス

米ギャップ、売上高見通し引き上げ ホリデー商戦好発
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中