女性アイドルたちの相次ぐ悲劇で韓国は変われるか
Can Three Tragedies Spark Change?
2015年にソウルでパフォーマンスをするハラ HAN MYUNG-GU-WIREIMAGE/GETTY IMAGES
<リベンジポルノや盗撮の被害者の自殺が相次ぎ、女性をないがしろにする社会や司法に怒りが噴出>
韓国では性暴力やセクハラ被害を告発する「#MeToo」運動を機に、2年ほど前から女性の地位をめぐる議論が活発になっている。さらに、最近相次いだ3人の女性の悲劇的な死が、韓国人女性を苦しめる3つの相関する問題を浮き彫りにする。性暴力、オンライン・ハラスメント、盗撮だ。
これらの問題では、女性の被害が男性に比べて圧倒的に多い。社会全体が真剣に向き合って、改善を進めることが必要だ。3人の悲劇を受けて、韓国では市民の保護、特に女性の保護を求める機運が高まっている。
11月24日、K-POPの人気女性アイドルグループKARAのメンバーだったク・ハラ(28)が、自宅で死亡しているのが発見された。自殺とみられている。ハラは元恋人のチェ・ジョンボムから暴行を受け、性行為の動画を公表すると脅されたとして、昨年9月に民事訴訟を起こしていた。チェは今年1月に傷害、強要、脅迫、器物損壊、性行為の隠し撮りなどの容疑で在宅起訴され、8月に懲役1年6カ月、執行猶予3年の有罪判決を受けた。ただし、隠し撮りについては無罪とされた。原告と被告双方が控訴している。
判決に対する不満がファンや女性の権利活動家の間で高まるなか、ハラの死後は特にチェや彼のような男性への厳罰を求めるハッシュタグがソーシャルメディアで広まっている。
批判は、裁判を担当したオ・ドクシク判事にも向けられた。判事はチェが性行為を撮影したことについて、「被害者は明確な同意は示さなかったが、被害者の意思に反して撮影したようには見えない」とし、隠し撮りについては無罪とした。
韓国大統領府には今秋、性犯罪の量刑の見直しを求める国民請願が提出されていた。ハラの死後、この請願が改めて注目され、署名した人は26万人を超えている(20万人を超えた請願には政府が正式な回答をする)。
こうしたプライバシー侵害の被害者は、著名人だけではない。韓国ではここ数年、公衆トイレや更衣室、宿泊施設などにスパイカメラ(小型の隠しカメラ)を設置し、人々のプライベートな瞬間を盗撮する行為が増え続けている。
スパイカメラの被害者は主に女性だ。こうした犯罪は、取り返しのつかない結果を招きかねない。
韓国南部の病院で働いていた女性が自殺したのも、盗撮被害のためだった。男性の同僚が更衣室にスパイカメラを設置して、彼女を含む数人を盗撮していたことが発覚し、動画流出の恐怖に怯えていた。
盗撮に寛大過ぎる司法
この一件は、プライバシーを侵害された被害者が、事件の直後にも、そして長期的にも苦しみ続けるという事実を改めて浮き彫りにした。しかも韓国の司法制度は、またしてもこの手の犯罪に寛大だった。性的動画の違法な撮影や共有は最大で5年の禁錮刑だが、この容疑者への判決は懲役10カ月にすぎなかった。