最新記事

香港

金融情報大手リフィニティブがロイターの香港デモ報道を阻止、8月から200本以上

2019年12月16日(月)13時15分

香港が反政府デモに揺れる今年8月、ロイターは、暴動を鎮めるためにデモ参加者らの要求を一部受け入れたいという林鄭月娥・行政長官の秘密の提案を、中国政府が却下していたと報道した。中国当局が神経をとがらせかねない内容だった。写真は2018年10月、ロンドンで撮影(2019年 ロイター/Russell Boyce)

今年8月、香港が反政府デモに揺れる中、ロイターは、暴動を鎮めるためにデモ参加者らの要求を一部受け入れたいという林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の秘密の提案を、中国政府が却下していたと報道した。中国当局が神経をとがらせかねない内容だった。

記事はデモ参加者らの主張の柱、つまり中国政府が香港の内政に深く干渉しているとの主張を裏付けるものだった。中国の国有紙はこの記事を、「でっちあげ」で「恥ずべき」ものだと非難。記事は間もなく中国本土で読めなくなった。

記事を止めたのは中国政府ではなかった。金融取引・分析プラットフォーム「Eikon」を通じてロイターのニュースを世界中の投資家に配信している金融情報プロバイダー、リフィニティブが削除したのだ。昨年までロイターの親会社、トムソン・ロイターが保有していたリフィニティブは、中国中央政府の圧力によって中国本土で他にも多くの記事を検閲するようになっている。

今年8月以降、リフィニティブが阻止したロイターの配信記事は、香港デモ関連ほか、中国政府に不利な印象を与えかねない記事も含めて、200本を超える。リフィニティブ内部の文書によると、同社はこの夏、検閲を容易にするため自動フィルターシステムを導入した。このシステムでは中国関連記事の一部に「制限付きニュース」という新たなコードも付与している。

その結果、リフィニティブの中国の顧客は、今年屈指の重大事である香港デモに関する記事へのアクセスが制限された。その中には、格付け機関による香港の格付け引き下げに関する記事2本が含まれる。中国のEikonでアクセスできるニュース配信元はロイター以外にも100種類ほどあるが、いずれもこの検閲の影響を受けている。

習近平国家主席の下、中国の検閲はここ数年厳しさを増し、西側企業は中国政府が政治的に危険とみなすニュース、言論、製品を阻止するよう迫られている。リフィニティブの中国での売上高は年間数千万ドル。ロイターが6月、3人の関係筋の話として報じた通り、リフィニティブは今年、当局から中国事業を停止させると脅された後に検閲を始めた。

リフィニティブの他にも、企業は次々と中国の要求をのんでいる。ホテル大手マリオット・インターナショナルは昨年、台湾を中国とは別の国として表記した件を謝罪し、一時的に中国語のウェブサイトを閉鎖した。複数の米航空会社も自社のサイトで台湾を中国の領土外として表記するのをやめた。中国政府は台湾を自国の一部と見なしている。これらの企業は自社の行為を擁護した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中