最新記事

アメリカ政治

トランプは反ユダヤ主義だ、ユダヤ系アメリカ人が反発、支持率も半減

Jewish Groups Slam Trump's 'Anti-Semitic' Remarks

2019年12月9日(月)17時05分
ジェイソン・レモン

トランプはユダヤ系アメリカ人よりイスラエル右派の味方なのか?(12月7日、フロリダでイスラエル人団体の会合で演説したトランプ) Loren Elliott- REUTERS

<ユダヤ系アメリカ人は、トランプと共和党には根深い白人ナショナリズムがあり、それが反ユダヤ主義や人種差別につながっていると見ている>

12月7日に開催されたアメリカに帰化したイスラエル人団体の年次総会で、ドナルド・トランプ米大統領が行った演説が物議を醸している。在米ユダヤ人グループはトランプの発言を「反ユダヤ主義」と厳しく非難した。

トランプ大統領は演説の中で、「イスラエルを十分に愛していない」ユダヤ系アメリカ人がいる、と述べ、「私ほどイスラエルにとって友好的な大統領はいない」と訴えた。さらに「ユダヤ人の多くが不動産ビジネスに携わっている。私はよく知っている」と言い、「ユダヤ人はたいへんな遣り手だ。いい人たちとはいえないが、あなたがたは私に投票しなければならない。選択肢はない」と述べた。

ユダヤ系アメリカ人グループは、このコメントは「反ユダヤ主義的」で、「致命的な結果」を招く可能性がある、と本誌に語った。トランプの発言は本質的に「ユダヤ系アメリカ人は必ずイスラエルとその右派の政策を支持しなければならない」ことを意味し、それはアメリカをはじめ世界各国に住むユダヤ人を攻撃するために使われる「ユダヤ人の忠誠心はアメリカよりイスラエルにある」という偏見を助長するもの、という声もある。

<参考記事>トランプ政権下、ドイツに戻るユダヤ系アメリカ人が急増の皮肉
<参考記事>イスラエル、ゴラン高原の入植地を「トランプ高原」と命名

共和党の反ユダヤ主義

「トランプ大統領の発言は常軌を逸しており、いくつもの反ユダヤ感情を刺激する。彼の演説は、米共和党内の反ユダヤ主義の根深さを露呈している」と、進歩的なユダヤ系アメリカ人活動組織「イフノットナウ」の政治ディレクター、エミリー・メイヤーは言う。

「こうした表現は致命的な結果をもたらす可能性がある。ユダヤ人として、私たちは共和党内部に存在するこうしたあからさまな白人ナショナリズムと反ユダヤ主義を否定するよう求める」

やはり進歩的なユダヤ系アメリカ人組織「平和のためのユダヤ人の声」の共同ディレクター、アリス・ワイズも同様の心情を訴えた。

「トランプ大統領は、反ユダヤ主義的な表現を使わずにユダヤ人に語りかけることができない。イスラエルに批判的で、人種差別に反対する大統領候補を積極的に支持するユダヤ系アメリカ人は増えている」と、ワイズは言い、トランプは「あくどいユダヤ人というステレオタイプを使った」と付け加えた。

全米ユダヤ民主評議会のヘイリー・ソイファー事務局長は、本誌宛ての電子メールでトランプの発言を「非常に不快」で「非良心的」だと評した。

「反ユダヤ的なステレオタイプのイメージを持ち出して、『ユダヤ人は金で動き、イスラエルに忠誠を尽くしていない』と決めつける卑劣で偏狭な大統領の発言を、私たちは強く非難する。トランプはずうずうしくも、ユダヤ人には自分を支持する以外の「選択肢」がないとまで言った」と、ソイファーは述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第1四半期速報値0.3%減 関税で3年ぶ

ワールド

トランプ氏、「好きなだけ」政権にとどまるよう要請 

ワールド

中国との公正な貿易、知的財産権の管理も含まれる=ト

ビジネス

独CPI、4月速報は+2.2% 予想上回るも伸びは
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 2
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・ロマエとは「別の役割」が...専門家が驚きの発見
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 7
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 8
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中