TOEICスコアが日本より150点も高い韓国でも、英語が話せるとは限らない
日本では今回の入試制度の改革は、「一度だけではなく、何度も試験にチャレンジできるチャンスを増やしてあげよう」「日本人が英語を話せないのは受験制度に問題があるからだ。受験に『話す』と『書く』項目を増やしたら、英語を話せる人が増えるだろう」といった利点を期待して計画されたようだ。だが本当に今回のシステムが導入されていたら日本人は英語を喋れるようになっただろうか?
上記に紹介したように、韓国には数人の人気TOEICティーチャーがいる。そこで、TOEIC講義動画を見てみたが、内容はいかに点数をあげるかという「点の取り方のコツ」を中心に展開している。それはさながらゲームのようで、なるほど確かに点数は上がりそうだと納得はするものの、これで本当に英語を話せるようになるのかは正直分らない。
TOEICスコアが高くても話せない
多くの人がビジネスに有利になるからと高いスコアを出そうと躍起になっているTOEICやTOEFL。だが、筆者個人としてはその信頼性には疑問を感じている。
以前、韓国の配給会社で映画買い付けを担当していた。海外で様ざまな国の人と買い付け金額を交渉するため、当然社員には英語は必須である。そのため新入社員の採用の際は、もちろん履歴書にTOEICやTOEFLなど英語民間試験の点数を記入してもらっていた。
面接もなるべくこれらの点数の高い人に来てもらっていたのだが、実際会って「最近見た映画のストーリーとどこが良かったのか英語でちょっと話してみてください」というと、意外にも会話ができない応募者が多かった。なかには「無理です」と英語で話すことさえ拒否する人も。こうした面接を数回経験した後、点数はもう信じないことにし、点数は低くても映画に情熱がある人に面接に来てもらうことに切り替えた。
最終的にオタクなまでに好きな『スター・トレック』の映画についてベラベラ熱く語りだした人を採用したが、これが大正解で、彼は今でもバリバリ世界中を飛び回って映画の買い付けをしている。
日本人は英語を喋れない人が多いのは事実だ。グローバル化が進むなか、それを何とか打開するため大学入試の方法から変えようという取り組みがあったことは、未来に希望がもてる。
しかし、実際にTOEICなどの民間試験で高いスコアを出す韓国ですら試験そのものが目的化されていることをみると、日本の大学入試に民間試験を取り入れても日本人がどれだけ英語をしゃべれるようになるのか疑問が残る。
本当に英語で話せるようになるためには、何より「英語でこのことを伝えたい!」というモチベーションの強さが重要なのではないだろうか。