雨が降ると植物はパニック状態になっていた:研究結果
水は、植物が生きるために不可欠なものだけれど...... Martyna Broda Owen Duncan and Harvey Millar image courtesy of UWA
<西オーストラリア大学などの研究チームが「雨が植物に触れると、植物は複雑な化学的信号を発し、雨から身を守るための備えをする」ことを発見した......>
水は、植物が生きるために不可欠なものである。しかしながら、植物は雨をさほど歓迎しておらず、むしろこれによって「パニック状態」になることが明らかとなった。
「雨が触れると、植物は化学的信号を発し身を守るための備えをする」
西オーストラリア大学やスウェーデンのルンド大学らの国際研究チームは、雨に対する植物の反応について研究し、「雨が植物に触れると、植物は複雑な化学的信号を発し、雨から身を守るための備えをする」ことを発見した。
この研究論文は、2019年10月29日、米国科学アカデミーの機関誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」で公開されている。
研究チームが植物に水を散布してその作用を観察したところ、MYC2タンパク質によって連鎖反応が起きていることがわかった。MYC2タンパク質が活性化すると、266個の遺伝子が動きだして自衛の準備に入るとともに、この信号が葉から葉へ伝播して、様々な防御作用を引き起こしたという。
雨は病原菌を拡散させる主な要因でもある
それではなぜ、植物は雨が降るとパニック状態に陥るのだろうか。雨粒には、微生物やウイルス、真菌胞子が含まれており、最長10メートルの範囲であらゆる方向に広がる。つまり、雨は、植物が生きるために不可欠である一方、病原菌を拡散させる主な要因でもあるのだ。
雨が降ると、葉から葉へ伝播する信号と同じものが、空気を通して周囲の植物にも伝達される。その役割を担っているのが、植物ホルモンのひとつ「ジャスモン酸」だ。
研究論文の共同著者である西オーストラリア大学のハーベイ・ミラー教授は、このメカニズムについて「周囲の植物が防衛作用を働かせれば、疫病が拡散しづらくなる。つまり、周囲の植物に"警告"を伝えることは植物にとって得策である」と解説している。
深刻な事態を引き起こすリスク
植物は、危機が発生しても動くことができないため、複雑な信号システムによって身を守ろうとする。緊急時の植物間コミュニケーションについては、米コーネル大学らの研究チームが「植物には危険な外敵の存在を周囲に知らせる『標準語』がある」ことを明らかにしている。
雨は、植物にとって死に直結する要因とはいえないまでも、深刻な事態を引き起こすリスクはある。それゆえ「パニック状態」に陥るようだ。