「バグダディ死亡」共同通信記事の間違った認識
AN IMMORTAL FOE
このことはアルカイダがウサマ・ビンラディンの死後、アイマン・アル・ザワヒリというカリスマ性の欠如した指導者の下で、ビンラディン時代をはるかにしのぐグローバルなジハード・ネットワークに「成長」したことが証明している。「イスラム国」もアルカイダも、啓示に従い世界征服を目指す基本方針は同じだ。
共同通信の記事は「イスラム国」をトップダウン的な中央集権組織と捉えている点も誤っている。「イスラム国」は啓示に従い自律的に行動する個人・集団の総体だ。その支部は東はフィリピン、インドネシアから西はアフリカまで存在し、今年に入ってインドやトルコでも支部設立が宣言された。啓示は普遍・不変であるため、カリフが死のうと大勢に影響はない。
私たちはトランプの発言やこういった記事をうのみにし、「世界は安全になった」「イスラム国は壊滅した」などと安心してはならない。むしろ「イスラム国」が弔い合戦に奮起することに警戒すべきだ。フィリピン当局は国内で報復攻撃の可能性があると直ちに警告した。油断は禁物だ。
[執筆者] 飯山 陽
AKARI IIYAMA
イスラム思想研究者。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。イスラム教という切り口から国際情勢を分析している。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)。
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