最新記事

メンタルヘルス

ストレス耐性は就学前に決まる? 産業医が見た「ストレスに強い人」が共有する経験

2019年11月6日(水)16時10分
武神 健之(医師、医学博士、日本医師会認定産業医、一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事) ※東洋経済オンラインより転載

ストレスに強い大人は、子ども時代の過ごし方が大きく影響しているという。 kohei_hara-iStock

<学生時代のエリートが社会に出て挫折するのには深い理由があった>

日々、産業医として診察をしていると、学生時代に優秀だった人が、社会人になってストレスに悩み、心身ともに疲弊し潰れてしまうというケースを見かけます。一方、学生時代には目立った成績ではなかった、クラスの平均かそれ以下だった人が、社会人になり結果をしっかり出し、人望も厚くどんどん昇進していくこともあります。

この違いはどこにあるでしょうか。産業医として、通算1万人以上と面談するなかで見えてきたのは、子ども(学生)時代の過ごし方に影響しているということでした。

どのような子ども(学生)時代を過ごし、どのようなスキルを磨けば高いストレス耐性が身に付くのか、ここにお話しさせていただきます。

認知能力を超える非認知能力を持っている

比較的ストレスに強い人に子ども時代について聞いてみると、多くの人が、認知能力だけでなく、非認知能力を継続的に育まれてきたという共通点がありました。

認知能力とは、テストの点数や偏差値、IQなど、数字で測定可能で、従来の学校教育等で重点が置かれてきたものです。ハードスキルとも言われ、言われたことをやる、過去問、塾や予備校、丸暗記などの時間効率がよい勉強によって得られやすい特徴があります。

一方、非認知能力はソフトスキルとも言われるようなものです。数字だけでは測れない、総合的人間力を意味します。

勤勉性、外向性、協調性、精神的安定性などが代表的ですが、ほかに、まじめさ、好奇心、社交性、利他性、自己肯定感、責任感、想像力、やり抜く力、自主性、積極性、コミュニケーション力、共感力、柔軟性、忍耐力など。さまざまなものがあります。

なぜ"総合的"と呼ぶかというと、例えば、回復力(レジリエンシー)に優れる人がいたとして、その人は回復力に優れるという1点だけで、メンタルヘルス不調になりにくいのではありません。

そのような人は多くの場合、職場で日頃から上手にコミュニケーションを行っていたり、わからないことを人に聞く素直さや謙虚さ、また、周囲を巻き込む行動力、そして自身の試行錯誤ややり抜く力など、さまざまな要素を持っていたりします。そのため、そもそも回復力をそこまで要さない、要したとしても周囲がサポートしやすい人なのです。非認知能力とは、このように複合的なものなのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中