【デモ隊の告白3】「民主はなくてもイギリス人は愛国心を押し付けなかった」運転手
CONFESSIONS OF A MASK
PHOTOGRAPH BY CHAN LONG HEI
<香港がこの先どうなるか、まだ見通せない。これまで半年、香港のデモ参加者たちは何のために戦ってきたのか。本誌「香港のこれから」特集より>
香港で逃亡犯条例改正案に反対するデモが始まって6カ月。身の安全を守るため、デモ参加者のほとんどはマスクで顔を隠してきた。
時に暴徒と非難されながら、彼らは何のために戦ってきたのか。その素顔と本音を香港人の写真家・ジャーナリストが伝える。
本誌12月3日号(11月26日発売)「香港のこれから」特集で取り上げた、15人のデモ参加者による「仮面の告白」。その1人をここに掲載する。
ボランティア運転手 Pepe(30)
自分も友人たちも(逃亡犯条例改正案に対して)怒りが収まらなかった。改正案が通過したら、未来への悪影響が出るのは必至だ。最初は街に出てスローガンを叫んでいたが、どんどん参加の度合いが増していった。
7月27日に元朗地区で行われたデモに、警察は事前に反対通知書(禁止令)を出していた。デモ参加者が現場から帰宅できないことを心配して、車で現場まで行くことを決めた。中学生を送ってやった時、もし私がいま中学生だったら、同じことをしているだろうと考えた。この年になると優先すべきことがあり過ぎる。諦められないこともある。こうした形で応援して支えることしかできない。
「5大要求」の中でも、真の普通選挙実現は最終目標だが、達成には時間がかかる。デモ参加者はみんな、法律に違反すれば裁判で有罪判決を受ける覚悟は持っているはず。一方で、警察は必要以上の暴力を行使した。警察も司法によって裁かれるべきだ。
(香港の未来は)楽観視できない。イギリス植民地下の1980年代に生まれた私たちは、どうしても過去と比べてしまう。民主はなくても、イギリス人は愛国心を押し付けることはなかった。2047年になれば、香港は「一国一制度」に変わる。外国に移住することや、子供を国外留学させることも考えている。
<2019年12月3日号「香港のこれから」特集より>
※他のデモ参加者による「仮面の告白」:
【デモ隊の告白1】「前線にも行った。香港にはまだ希望を持っている」女子高校生
【デモ隊の告白2】「北京の仕事を辞めて香港に戻り、消火部隊に入った」25歳女性
【デモ隊の告白4】「僕は会社にも行くが、闘争こそが真実」フル装備の香港人男性
【デモ隊の告白5】「この街が好きな理由を取り戻したい」香港人救急ボランティア
【デモ隊の告白6】「次の世代のために自分が銃弾を受け止める番」20歳女性
【デモ隊の告白7】「中国本土で生まれ、愛国心のある子供だったが」24歳男性
【デモ隊の告白8】「香港が中国のただの1つの省になってほしくない」中産階級の男性
【デモ隊の告白9】「警察を調査しないと、みんなの気が済まない」駅で花を供える女性
【デモ隊の告白10】「なぜ若者が遺書まで書き残し、立ち上がるのか」断食をした老人
【デモ隊の告白11】「レノンウォールの『成長』に衝撃を受けた」見守る香港女性たち
【デモ隊の告白12】「プロテスタントとカトリックが支援に駆け付けた」香港の牧師
12月3日号(11月26日発売)は「香港のこれから」特集。デモ隊、香港政府、中国はどう動くか――。抵抗が沈静化しても「終わらない」理由とは? また、日本メディアではあまり報じられないデモ参加者の「本音」を香港人写真家・ジャーナリストが描きます。