最新記事

香港

香港デモ、2人目の死者で夜間外出禁止令の憶測も 習中国主席は暴力停止を重視

2019年11月15日(金)08時21分

香港では反政府デモが続いている。学校は休校、高速道路は封鎖されており、一部の交通機関は運休している。写真は大学に設けられた手製のゲートのそばで警察の様子を伺うデモ参加者。香港で撮影(2019年 ロイター/Tyrone Siu)

香港では14日も反政府デモが続き、学校が休校となるほか、高速道路が封鎖され、交通機関が一部運休するなど、市民生活に深刻な影響を及ぼしている。

こうした中、頭部にブロックが当たったとみられる70歳の街路清掃員が死亡したと病院が明らかにした。警察側は、マスクをしたデモ参加者が投げつけた物体が当たったようだと説明した。

中国国営テレビの中国中央電視台(CCTV)によると、ブラジルを訪問中の習近平国家主席は香港情勢について、暴力の停止が最も緊急の課題だと語った。

習主席は香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官を引き続き強く支持し、法に基づく政策を実行して暴徒を罰すると表明。また、国外からの香港情勢への干渉には反対し、「一国二制度」の原則は揺るがないとも述べた。

一方、中国共産党機関紙・人民日報傘下の有力国際情報紙である環球時報がツイッターに、香港政府が週末の夜間外出禁止令を発令する見込みと投稿したものの、その後すぐに投稿を削除するという騒ぎもあった。

ツイートは匿名の関係筋の話を基にしたもので、詳細については触れていなかったが、インターネット上ではこうした内容のうわさが広がっている。

環球時報の胡錫進編集長は、ツイートを削除したのは「十分な裏付け情報がなかったため」と説明。「情報の入手経路を調べたが、情報が、この特ダネニュースを裏付けるには不十分と結論付け、ツイートの削除を要請した」と投稿した。

香港政府のコメントは得られていない。

香港理工大学の学生はロイターに「夜間外出禁止令が出されてほしくないが、いずれ出されると考えている」と述べ、11月に予定されている区議会(地方議会)選挙の延期と併せて発表されるとの見方を示した。

香港ではここ1週間、車両や建物が放火されたり、警察署や列車に火炎瓶が投げ込まれる事件が発生。高級ショッピングモールに対する破壊活動も行われている。

デモ隊は主要道路を引き続き封鎖しており、14日早くには入口が封鎖されている香港海底トンネル付近で、警官が催涙ガスを発射した。

複数の大学ではキャンパス内に多くの学生が立てこもっており、食料・レンガ・火炎瓶などを準備して、警官隊との衝突に備えている。

一部の大学前には14日早く、機動隊が配備された。

一部の鉄道路線は運休となっており、複数の地下鉄駅では通勤客の長い列ができた。駅のプラットフォームに配備された機動隊に罵声を浴びせる通勤客の姿も見られた。

14日には、ビジネス街などでさらなる抗議活動が予定されている。

香港警察は13日、抗議デモが「非常に危険で、致命的なレベルにさえ」達したと表明。当局の発表によると、13日の衝突では64人が負傷、2人が重体となっている。

警察は男性1人が13日に転落死したと発表したが、詳細は明らかにしていない。

メディア報道によると、林鄭長官は13日遅く、政府高官と会談。新たな緊急対応策が導入されるのではないかとの観測が浮上している。

交通渋滞に巻き込まれた24歳の会社員は「政府と警察が暴力行為をエスカレートさせている。暴力行為を止めたいなら、政府は我々の要求に耳を傾けるべきだ」と述べた。

香港教育局は、交通機関の混乱を理由に、14日に続き15─17日も全校が休校になると発表した。同局は学生に対し、暴力行為に関与しないよう呼び掛けた。

一部の大学は年内は授業を行わないと発表。一部のショッピングモールも14日は休業する方針だ。

林鄭長官は今週、混乱を引き起こしているデモ隊は「身勝手」で、市民の敵だと非難。

これまで、抗議デモは通常、週末に行われていたが、今週は平日も抗議活動が行われており、混乱が拡大している。

地下鉄を運営する香港鉄路(MTR)<0066.HK>によると、施設の損傷により、一部の鉄道・バス路線で運休が続いているほか、一部の駅も閉鎖されている。終電時刻は全線で通常より2時間以上早い午後10時に繰り上げられている。

輸送機関の混乱は香港経済を一段と悪化させる要因になっている。小売りや観光が打撃を受けており、香港は第3・四半期に10年ぶりとなるリセッション(景気後退)に陥った。

*内容を追加しました。

[香港 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191119issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月19日号(11月12日発売)は「世界を操る政策集団 シンクタンク大研究」特集。政治・経済を動かすブレーンか、「頭でっかちのお飾り」か。シンクタンクの機能と実力を徹底検証し、米主要シンクタンクの人脈・金脈を明かす。地域別・分野別のシンクタンク・ランキングも。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インド投資は中長期的に魅力、「次の中国」=ファンド

ワールド

サムスン電子、利益改善「限定的」と予想 半導体事業

ビジネス

ブラックストーン、低コストAI登場でもデータセンタ

ワールド

シリア、包括的な政府樹立へ 暫定大統領が表明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中