最新記事

韓国

韓国、辞任したチョ・グク法相の検察改革で、最初に恩恵を受けたのはチョ氏の妻だったが......

2019年10月23日(水)18時00分
佐々木和義

23日、裁判所に出頭したチョ氏の妻 検察の召喚が公開から非公開に変更されていたが...... Youtube

<先週、文在寅大統領の支持率が39%に下落した。大きな影響を与えたチョ・グク法務部長官が行おうとした検察改革とは......>

韓国の世論調査会社ギャラップが2019年10月15日から17日に行なった調査で、文在寅大統領の支持率が39%に下落し、不支持率は53%まで上昇した。文大統領の支持率が40%を割り込んだのは就任以来はじめてである。

一方、リアルメーターが10月14日から16日に行なった調査の支持率は45.5%で、前週と比べて4.1ポイント上昇し、不支持率は4.5ポイント低い51.6%だった。対照的な結果だが、文大統領がチョ・グク氏を法相に相当する法務部長官候補に指名した8月中旬以降、不支持が支持を上回る状況が続いていることに変わりはない。

韓国ギャラップは支持率が下がった要因として、チョ・グク長官の辞任に大統領支持層が失望したと分析する。政権を支持しない理由は「経済・国民生活問題の解決が不十分」という回答が最も多く「人事問題」が続いている。不支持層がチョ・グク氏を法務長官に指名した責任を問う一方、支持層も検察改革など、施策の後退に失望したとみる。一方、リアルメーターは、長官の辞任が支持率上昇に結びついたと分析する。

相次ぐチョ氏と家族の不正・疑惑......

チョ・グク前長官は、ソウル大学法学部の教授を務めていた2017年、文在寅大統領候補を支援し、政権誕生と同時に青瓦台(大統領府)民情首席秘書官に就任した。検察や情報機関の国家情報院など、権力機構の改革を指揮し、文大統領の分身とまでいわれたが、文大統領がチョ氏を法務部長官に指名すると、野党やメディアが本人と家族の不正を取り上げ、疑惑が露呈しはじめた。

チョ氏は民情首席秘書官に就任してまもない2017年7月、私募ファンドに74億5000万ウォンを投資する約定を締結し、妻と子の名義で10億5000万ウォンを投資した。ファンド出資者は全員がチョ氏の身内で、「チョグク・ファンド」が集中投資をした「ウェルズシーエヌティー」は、大型公共事業を次々に受注し、飛躍的な成長を遂げている。

チョ氏の娘は疑惑が多い。高校3年の時、医学研究機関に2週間インターンとして勤務した後、医学関連論文に名前を連ね、その評価から名門の高麗大学に特別枠で入学した。しかし、専門的な学術論文で、高校生が書くことができる内容ではなく、コネを利用したという不正入学疑惑が持ち上がった。

また、大学院進学時に有利に働いたとされる東洋大学総長の表彰状も、チョ氏の妻であるチョン・ギョンシム東洋大教授が偽造した疑いがあるとして検察は調査を進めている。チョ氏の娘はまた、釜山大学医学専門大学院で2度落第したにもかかわらず、奨学金を6回受領し、指導教授が大統領の主治医に選ばれた。大統領の主治医は大統領府に近い大学病院の医師への委嘱が通例だが、緊急時の対応が難しい釜山の医師に委嘱したのだ。ほかにもチョ氏の母親が理事長を務めている熊東学園の債権・債務にかかる疑惑など、さまざまな疑惑に包まれている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

英製造業PMI、3月は23年10月以来の低水準 新

ビジネス

仏製造業PMI、3月改定48.5に上昇 見通し厳し

ビジネス

欧州株STOXX600の予想引き下げ、米関税で=ゴ

ビジネス

再送-インタビュー:トランプ関税で荷動きに懸念、荷
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中