最新記事

韓国

韓国、辞任したチョ・グク法相の検察改革で、最初に恩恵を受けたのはチョ氏の妻だったが......

2019年10月23日(水)18時00分
佐々木和義

文在寅大統領がチョ氏を法務長官に指名した直後から、学閥主義が蔓延するなか一般入試に挑んだ学生を中心に長官の辞任を求める集会がはじまり、野党や文政権反対派が加わった。

また韓国ではいまでも朴正煕元大統領を支持する人は少なくないが、その支持層も朴槿恵前大統領の保釈と政界復帰を求めて呼応し、毎週末に大規模なデモが行われ、3年前の朴槿恵弾劾の引き金となった「ろうそく集会」に匹敵する規模まで拡大した。

国会でも野党がチョ・グク長官の罷免と指名した大統領の責任を追求し、国政が混乱するなか、結局、チョ氏は辞意を表明、ソウル大学法学部教授に復職した。

チョ氏が進めた検察改革の最初の"恩恵"対象者は、チョ氏の妻

また、政府と与党は改革の一環として検察特捜部の縮小を決め、22日から施行している。政府高官や政治家の不正を捜査する部署で、政府の求めに応じるなど政権との癒着が指摘されていた。

検察改革は、検察と法務部の監察強化や被疑者の人権保護も推し進めている。文在寅大統領は16日、青瓦台(大統領府)に法務部長官代行のキム・オス次官とイ・ソンユン検察局長を呼び、監察機能の強化策を講じるよう指示を出すなど、改革を推進する姿勢を示した。

そして、被疑者の人権保護では、検察の召喚が公開から非公開に変更された。朴槿恵前大統領の事件で崔順実の娘が何度も顔を晒された一方、最初の"恩恵"対象者は、改革を推進していたチョ・グク長官の妻だった。誰のための改革か中央日報は疑問を投げかけている。

韓国では政権が変わるたびに特捜部が前政権の不正を摘発してきたが、検察改革で政権との癒着がなくなれば、次期政権が反勢力に移行しても文政権の糾弾は難しくなるだろう。特捜部の縮小は施行以降に捜査がはじまる事件から適用される。前大統領のほか、チョ氏の事件も従前と変わらない。組織のトップと家族を捜査するジレンマから解放された新生特捜部による解明に期待がかかる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

伊藤忠、西松建設の筆頭株主に 株式買い増しで

ビジネス

英消費者信頼感、11月は3カ月ぶり高水準 消費意欲

ワールド

トランプ氏、米学校選択制を拡大へ 私学奨学金への税

ワールド

ブラジル前大統領らにクーデター計画容疑、連邦警察が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中