最新記事

カナダ

トルドー・リベラル首相再選に保守派が激怒、分離独立目指す動きも

Wexit: Conservative Canadians Call For 'Western Exit' From Trudeau's Canada

2019年10月23日(水)16時00分
シャンタル・ダシルバ

スキャンダル続きで再選を危ぶまれていたトルドー首相(10月22日)Stephane Mahe-REUTERS

<石油・ガス・鉱業が盛んなカナダ西部アルバータ州では、ほぼ全域で反トルドー派が勝利。連邦から離脱した方がよほど繁栄する、という意見が盛り上がっている>

カナダで総選挙が行われた10月21日の夜、ジャスティン・トルドー首相はモントリオールで、与党自由党の僅差での勝利を祝った。一方、遠く離れた西部カナダでは、保守派の人々による「ウエグジット」についての議論が盛り上がっていた。

「ウエグジット(Wexit)」とは、「ブレグジット(イギリスのEU離脱)」の頃語呂合わせ。その意味は文字通りカナダから「西部が離脱」することだ。

カナダからの分離独立を求める運動は、アルバータ州の石油・ガス産業の労働者から始まった。彼らはリベラルな現政権に対する強い不満を表明している。特に問題視しているのは、パイプラインのプロジェクトが宙に浮いたままになっていることだ。

<参考記事>メラニアとイケメン首相、G7で禁断の昼メロ劇場

この不満がトルドー政権の4年でどれほど高まったか、今回の総選挙の結果で明らかになった。アルバータ州ではほぼ全域で保守派が勝利したのだ。

カナダの放送局CTVの報告によると、ウエグジット運動への支持はソーシャルメディアで急増しているようだ。カナダのツイッターでは「ウエグジット」がトレンドになり、フェースブックのグループ「VoteWexit.com」に参加するメンバーも増えている。

22日の朝までに、VoteWexit.comグループには少なくとも7万3100人のメンバーが参加、多くの人が今後4年間、リベラル政権が続くことへの怒りを表明している。

西部と中央の大きな断絶

「西部諸州とカナダ政府の間には大きな断絶がある。そして今回の選挙の結果を受けて、関係はさらに悪化するだろう」とロナ・アンブローズ前保守党議員はカナダの放送局CTVの選挙番組で語った。

「西部はかつてカナダに加わることを望んでいたが、今は離脱を望んでいる。本気で議論しているのだ」と、彼女は言う。

今年8月にカナダの世論調査会社リサーチCo.が実施したオンライン調査によると、アンブローズの見方は的を射ているようだ。カナダからの「離脱」を求めるアルバータ州の住民は増加しており、10人に3人はカナダから離脱したほうがアルバータ州は繁栄すると感じている。

<参考記事>SNSで自滅する自撮り首相トルドー、スキャンダルで進歩主義イメージが...

だが同月、アルバータ州のジェイソン・ケニー州首相(統一保守党)はツイッターで、アルバータ州がカナダから追い出されるところは見たくないという声明を出した。

「アルバータ州民は、連邦の一員として不公平な扱いを受けていることに不満を抱いており、カナダからの離脱を支持する声さえある」と、彼は述べた。「トルドーにカナダから追い出されたくない。むしろ、彼を首相の座から追い出すことに集中したい」

VoteWexit.comのウエブサイトによると、11月にはアルバータ州全域で多くの集会が開催され、街頭デモによってウエクジットの声を拡大させることになっている。

集会は11月2日にエドモントン、16日にカルガリー、30日にレッドディアで計画されている。

(翻訳:栗原紀子)

20191029issue_cover200.jpg
※10月23日発売号は「躍進のラグビー」特集。世界が称賛した日本の大躍進が証明する、遅れてきた人気スポーツの歴史的転換点。グローバル化を迎えたラグビーの未来と課題、そして日本の快進撃の陰の立役者は――。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏の訪中日程、近日発表 北京含む2都市訪問

ビジネス

ドイツ財政赤字、24年は対GDP比1.75%へ=財

ワールド

仏、プーチン大統領就任式に駐ロシア大使出席=外交筋

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 3

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 6

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 7

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 10

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中