最新記事

クルド

トランプの「裏切り」で事態急変 中東諸国におけるクルド人の歴史

2019年10月22日(火)11時46分

◎トルコ

クルド人はトルコの人口の約20%を占める。

1984年、クルド労働者党(PKK)がトルコに反旗を翻して蜂起し、南西部での自治を求めた。以降の武装闘争では4万人以上の死者が出た。

99年にPKKのオジャラン党首が拘束され、裁判で死刑を宣告された。トルコはその後死刑を廃止したため、終身刑に減刑された。

エルドアン大統領はクルド語の使用制限を撤廃。政府は2012年、服役中のオジャラン氏と協議したが決裂し、紛争が復活した。

米国、欧州連合(EU)、トルコはPKKをテロ組織に認定している。

トルコ軍は、PKKの牙城に近いイラクのクルド人地域を頻繁に攻撃してきた。

トルコ政府はYPGをPKKの支部と見なしており、エルドアン大統領はYPGを壊滅すると表明。シリア北東部に軍を侵攻させた。

◎イラク

クルド人はイラクの人口の15─20%を占める。主な居住地は北部の3州。

1980年代、フセイン政権は化学兵器でクルド人を攻撃し、多くの村はせん滅され、クルド人数千人がキャンプへの収容を余儀なくされた。

91年以降、クルド人地域は半ば自治状態で、独自の政府と軍を持つが、予算はイラク中央政府に頼っている。

イスラム国がイラク北部の大半を制圧した2014年、クルド人部隊は中央政府の勢力失墜に乗じて油田都市キルクークなどを掌握した。

イラク政府軍とクルド治安部隊は、米国の後ろ盾を得てイスラム国を撃退し、イラク北部を掌握した。

クルド自治政府は2017年9月、独立の是非を問う住民投票を実施したが、これが中央政府と地域諸勢力の反発を買い、この地域は危機に陥った。

イラク軍は、クルド人勢力が14年以降掌握した地域を奪還。その後、両者の関係は改善したが、石油輸出と収入の分配を巡り緊張関係が続いている。

◎イラン

イランの人口に占めるクルド人の割合は約10%。

イラン政府は2011年、PKKの分派でクルド人の自治拡大を求めるクルディスタン自由生命党への軍事行動強化を約束した。

人権団体は、聖職者の支配層によってクルド人その他の宗教・人種少数派が差別を受けていると指摘している。

イランの革命防衛隊は数十年にわたりクルド人社会の紛争を鎮圧し、司法は多くの活動家に死刑や長期刑を宣告してきた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国防長官候補巡る警察報告書を公表、17年の性的暴

ビジネス

10月の全国消費者物価、電気補助金などで2カ月連続

ワールド

サハリン2はエネルギー安保上重要、供給確保支障ない

ワールド

シンガポールGDP、第3四半期は前年比5.4%増に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中