岐路に立つ日本の水道──今、考えたい公共サービスの受益と負担
これらの前提の下、推計結果は[図表4]の通りとなった。料金回収率が100%未満の団体に加えて、更新にかかる費用を料金収入で賄えていない団体も引上げが必要となるため、全体平均では2017年度時点で既に実際の料金から約40%の引上げが必要であった。そして、2045年度に向けては80%以上の引上げが必要で、すべての団体において引上げが不可避という試算結果となった。さらに、小規模団体ほど引上げ幅が大きく、現在給水人口が1.5万人未満の団体においては、2045年度の1ヵ月の水道料金が1万円を超過するなど、料金格差もますます拡大するという結果となった。
広域連携や官民連携を通じてダウンサイジングの実効性や経営の効率性を高めることで、実施しない場合と比べて料金の引上げ幅を抑制することが可能かもしれないが、いずれにせよ一定程度料金の引上げは不可欠である。これまで水道料金の十分な引上げをしてこなかったことが現在の課題へと繋がっていることを踏まえると、今後も時期を先送り、もしくは引上げ幅を抑制すると、将来世代への負担が増えるため、早い段階から少しずつでも水道料金を引上げていくことが必要である。
4―さいごに
国及び地方の財政は、人口減少や高齢化の進展によって、ますます厳しくなることが予想されるため、公共サービスの縮小と国民負担の増大をあわせて検討せざるを得ないだろう。しかし、水道料金の引上げに限らず、国民負担の増大については、政治的理由から先送りされがちである。国民が負担増に対して反対するのは、国民側が公共サービスの受益に対して無関心もしくは無知であることに加えて、行政側が理解を得られるような根拠を示せていないことが原因である。双方で公共サービスにおける受益と負担に対する意識と理解を深めていかなければならない。
*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポートからの転載です。
[執筆者]
神戸 雄堂 (かんべ ゆうどう)
ニッセイ基礎研究所
経済研究部研究員
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