日本に巣食う「嫌韓」の正体
THE MEDIA'S FAULT?
筆者が閲覧した時点で2万を超えるコメントが付いていた韓国・中央日報日本版のニュース(中央日報電子版が2019年8月5日に配信した「文在寅(ムン・ジェイン)大統領『南北平和経済の実現時は一気に日本経済に追いつく』」)を見てみよう。
「世界の問題児と手を繋ぐなんて孤立への第一歩です......来年のオリンピック(注:東京五輪)の共同ボイコットを実施してくれれば、間違いなく世界へのアピールになります」「日本に近寄らないよう距離を置いてください。韓国人にはビザの復活が必要です。短期のみでお願いします」といったコメントが上位に並んでいる。
インターネット世論を研究する立教大学教授の木村忠正(ネットワーク社会論)が2016年7月と8月に16~70歳の男女1100人を対象に行ったウェブアンケート調査(詳細は『ハイブリッド・エスノグラフィー』〔新曜社、2018年〕)によると、ヤフーニュースの利用率は木村が調査した全年代平均で72.5%、特に30代後半から40代(木村の分類では36〜50歳)の利用率は78.2%と高くなっている。
さらに注目すべきはコメント欄の閲覧率と書き込み率の高さだ。ヤフーニュースに付いているコメントまで閲覧しているのは、利用者全体の平均57.5%に達する。データは、多くの人々がコメント欄まで読んでいることを示唆している。書き込んでいるのは、全体の約15%に当たる。
そこでは、ポストでも問題になった「断韓」という言葉はとっくにメジャーなものになっており、もっと過激な言葉が日常的に飛び交っている。木村は書き込み全体の強い動機には①韓国、中国に対する憤り、②少数派が優遇されることへの憤り、③反マスコミといった感情があると指摘する。
憤りは自分たちよりも配慮され、「優遇」されている「彼ら」へと向かう。ニュースは記事単体で完結せず、コメント欄の反応までがワンセットになる。これが現代のニュースだ。
「嫌韓」言説は最もページビュー数の多いニュースサイトであるヤフーで日常的に目にすることができる。「一部の過激な右派」の言葉ならコメント欄の下位に沈んでもおかしくないが、これらの言葉に「そう思う」と支持を表明する人々が多いからこそコメント上位に表示される。
推測するに、コメント欄に書き込んでいる人も「そう思う」をクリックする人も、全員が本気で「断韓」ができると思っているわけではないだろう。ネットへの書き込みと、実際に政治的行動に移すことには大きな開きがある。