最新記事

地球温暖化

グレタ・トゥーンベリの人形を吊るしたのは誰か

Greta Thunberg Effigy Hanging From Bridge Decried as 'Shameful' By Mayor

2019年10月9日(水)17時00分
ジェシカ・クォン

ノーベル平和賞の呼び声も高いグレタ・トゥーンベリに悪意を抱く人間がいる(10月7日、米サウスダコタ州) Jim Urquhart-REUTERS

<16歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリに対する憎悪犯罪が明らかになった>

イタリアの首都ローマで、地球温暖化対策を訴える16歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリを模した人形が橋から吊り下げられているのが見つかった。ローマ市長を含む政府関係者などが、「恥ずべき行為だ」と厳しく非難している。

人形はトゥーンベリと同じお下げ髪。報道によれば、「グレタはあなたたちの神」という言葉が添えられていた。

ローマ市長のヴィルジニア・ラッジは、ローマ市はトゥーンベリならびに彼女の家族と連帯すると誓い、「私たちの町で、橋から吊るされたグレタ・トゥーンベリの人形が見つかったのは恥ずべきことだ」と、ツイートした。「トゥーンベリとご家族のみなさんに、ローマ市の連帯を表明する。私たちの地球温暖化に対する取り組みは終わらない」

ローマ市長ラッジのツイッターより


イタリアのセルジオ・コスタ環境・国土・海洋保全大臣も人形の写真をシェアし、こうした行為は「犯罪」であり「許されない」と非難した。

「ローマの橋から吊り下げられていた人形は、グレタ・トゥーンベリの気持ちを傷つけ、彼女を侮辱するものだ」と、コスタはツイートした。「環境や地球のために全力を注ぐ人すべてが、悲しんでいるに違いない。許されざる犯罪行為だ」

イタリア民主党のニコラ・ジンガレッティ党首は、これをトゥーンベリに対する「陰惨な暴力」だと言う。「自分と異なる考えを尊重しない人々によるこうした行為をわれわれは強く非難する」

誰の犯行か、地元警察が捜査している。

<参考記事>マララと真逆のグレタ・トゥーンベリが、人々の心をつかめる理由
<参考記事><動画>トランプを睨みつけるグレタ・トゥーンベリ鬼の形相

絶滅への反逆

一方、ローマでは10月7日、地球温暖化対策を訴える抗議デモがあった。これは、国際的な市民運動組織「エクスティンクション・レベリオン(絶滅への反逆)」による取り組みの一環で、地元自治体や政府機関に対して、気候と環境を守るためにもっと努力するよう働きかける運動だ。エクスティンクション・レベリオン公式ツイッターのプロフィールには、「気候・環境的な正義を目指し、非暴力で各国政府に反逆する」と書かれている。

トゥーンベリは、エクスティンクション・レベリオンに関連したツイートで、「今でなければいつ? あなたでなければ誰? 全員が必要なの!#EverybodyNow! 今すぐに!#TheTimeIsNow」とに行動を促した。

トゥーンベリは9月23日に国連本部で開催された「気候行動サミット」において、世界の指導者たちを強い口調で非難した。気候変動に十分な取り組みを行っておらず、若者を裏切っているという理由だ

「何もかもが間違っている」と語った。「私はここにいるべきではない。私は海の反対側にある学校にいるべきだ。それなのにあなたたちは、希望を求めて若者たちに頼ってくる。よくもそんなことができたものね」

人形は、この演説が気に入らなかった者の仕業なのだろうか。トゥーンベリは何もコメントしていない。

(翻訳:ガリレオ)

20191015issue_cover200.jpg
※10月15日号(10月8日発売)は、「嫌韓の心理学」特集。日本で「嫌韓(けんかん)」がよりありふれた光景になりつつあるが、なぜ、いつから、どんな人が韓国を嫌いになったのか? 「韓国ヘイト」を叫ぶ人たちの心の中を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かそうと試みました。執筆:荻上チキ・高 史明/石戸 諭/古谷経衡

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ大統領、イラン最高指導者との会談に前向き 

ワールド

EXCLUSIVE-ウクライナ和平案、米と欧州に溝

ビジネス

豊田織機が株式非公開化を検討、創業家が買収提案も=

ワールド

クリミアは「ロシアにとどまる」、トランプ氏が米誌に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 3
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 4
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 8
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 9
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中