最新記事

ポピュリズム

ヨーロッパでポピュリズムへの反省が始まった?

A New Hope for Democracy

2019年10月5日(土)15時00分
チャールズ・カプチャン(ジョージタウン大学教授)


だからといって両党がイデオロギー的な一致点を見いだせるとは思えないし、有効な統治を実現できる保証もない。しかしサルビニを退場させるという最優先課題に対処するために、イタリアの政治システムは適切に機能したと言えるだろう。

同盟の反移民的な言動と無責任なEU批判は、依然として大衆の間で受けがいい。それでもイタリア全体は、もっときちんとした形を持つ、まともな政治に回帰しつつある。ヨーロッパにはまだ、ポピュリストの政治指導者が権力を握っている国があることを考えると、イギリスとイタリアのこうした変化は歓迎すべきものだ。

例えばハンガリーでは、オルバンの権力は強くなる一方だ。ポーランドでも、右派政党「法と正義」が5月の欧州議会選挙で相変わらずの強さを示し、10月に予定されている総選挙でも善戦するとみられている。

しかし何より懸念すべきなのは、アメリカでトランプの人気に陰りが見えないことだろう。トランプは国内外で移民排斥的でナショナリスト的な主張を繰り返してきた。しかも2020年大統領選に向けて、支持基盤を勢いづけるとともに、民主党を突き放すために一段と過激な言動を取る可能性は高い。

民主党は18年の中間選挙の結果、下院で多数派の座を取り戻し、大統領の暴走を抑制しようとしてきた。だが、トランプは依然として民主主義の理念と手続きを踏みにじり、国内外に甚大な影響を与えている。

それなのになお、約40%の有権者から支持を集めており、再選の可能性は十分ある。

政治的駆け引きの結果

トランプ自身と同じくらい苦々しい問題は、共和党がトランプの気まぐれを黙認していることだろう。分別があるはずの議員たちが、一貫性のない気分屋のデマゴーグ(扇動政治家)にそろって追従しているのだ。

それはトランプが、共和党の支持基盤の心をがっちりつかんでいるからだ。減税と保守派判事の指名という、共和党が最も重視するアジェンダの一部を実現してきたことも大きい。

しかしトランプへの追従は、大きな代償ももたらしている。トランプは歳出削減や貿易重視、移民受け入れなど、共和党の伝統的な立場を捨てた。

また、白人ナショナリズムを支持し、移民を排斥する発言は、人種的・民族的・宗教的な多様性を維持しつつ社会のまとまりを確保してきたアメリカの民主主義と多元主義を脅かしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中