ヨーロッパでポピュリズムへの反省が始まった?
A New Hope for Democracy
だからといって両党がイデオロギー的な一致点を見いだせるとは思えないし、有効な統治を実現できる保証もない。しかしサルビニを退場させるという最優先課題に対処するために、イタリアの政治システムは適切に機能したと言えるだろう。
同盟の反移民的な言動と無責任なEU批判は、依然として大衆の間で受けがいい。それでもイタリア全体は、もっときちんとした形を持つ、まともな政治に回帰しつつある。ヨーロッパにはまだ、ポピュリストの政治指導者が権力を握っている国があることを考えると、イギリスとイタリアのこうした変化は歓迎すべきものだ。
例えばハンガリーでは、オルバンの権力は強くなる一方だ。ポーランドでも、右派政党「法と正義」が5月の欧州議会選挙で相変わらずの強さを示し、10月に予定されている総選挙でも善戦するとみられている。
しかし何より懸念すべきなのは、アメリカでトランプの人気に陰りが見えないことだろう。トランプは国内外で移民排斥的でナショナリスト的な主張を繰り返してきた。しかも2020年大統領選に向けて、支持基盤を勢いづけるとともに、民主党を突き放すために一段と過激な言動を取る可能性は高い。
民主党は18年の中間選挙の結果、下院で多数派の座を取り戻し、大統領の暴走を抑制しようとしてきた。だが、トランプは依然として民主主義の理念と手続きを踏みにじり、国内外に甚大な影響を与えている。
それなのになお、約40%の有権者から支持を集めており、再選の可能性は十分ある。
政治的駆け引きの結果
トランプ自身と同じくらい苦々しい問題は、共和党がトランプの気まぐれを黙認していることだろう。分別があるはずの議員たちが、一貫性のない気分屋のデマゴーグ(扇動政治家)にそろって追従しているのだ。
それはトランプが、共和党の支持基盤の心をがっちりつかんでいるからだ。減税と保守派判事の指名という、共和党が最も重視するアジェンダの一部を実現してきたことも大きい。
しかしトランプへの追従は、大きな代償ももたらしている。トランプは歳出削減や貿易重視、移民受け入れなど、共和党の伝統的な立場を捨てた。
また、白人ナショナリズムを支持し、移民を排斥する発言は、人種的・民族的・宗教的な多様性を維持しつつ社会のまとまりを確保してきたアメリカの民主主義と多元主義を脅かしている。