韓国訪問中に消えた9人のベトナム外交団員 公安当局が捜索要請
本当に「単に同行した企業幹部」だったのか?
共産党の1党支配という政治体制のベトナムでは一般労働者などがよりよい収入を求めて渡航先の海外で失踪するケースはあるものの、今回のような国会代表団のような外交使節の参加者が一度に複数名行方不明となる事件は珍しいという。
今回の失踪事件について韓国のメディアは、「不法滞在を目的にブローカーを通じて代表団の一行に加わったものとみられる」と報じている。しかし、今回身柄を拘束されてベトナムに戻った2人を含む9人は社会的地位も高く、裕福とされており、なぜ韓国で失踪したのかその動機は謎とされている。
10月2日に記者会見した計画投資省のグエン・デユク・チェン副大臣は、身柄を確保している2人の失踪者の氏名に関して「ベトナムと韓国両国の当局による調査が現在も進んでいる最中であることから現時点では公表できない」と非公開の理由を説明した。
ベトナムの社会情勢に詳しい者によると、同国政府の専用機を利用できるのは共産党総書記、国家主席、首相、国会議長などのごく一部のVIPとその随行員、同行者に限られるという。また、共産党中央局、大統領官邸、国会、政府各省庁からの要請があれば利用が許可されることがあるといい、失踪した9人が政府側の「単に同行した企業幹部」という説明にも疑問が示されている。
しかし官製報道機関しか公的存在を許されないベトナムでは、政府発表以外の報道は極めて限られることから、事件の発覚も発生から約10カ月後に韓国での報道を受ける形であり、失踪者の身元や動機などに関する続報も制限されているため明らかになっていない。いずれにせよ、ベトナム政府、公安当局にとっては都合の悪い事案であることだけは間違いないといえるだろう。