北京と香港が迎えた中国建国70周年、習近平は「人類共通の未来」を語った
China’s Show for the World
北京(写真)では建国70周年を盛大に祝う一方、香港では激しい衝突が起きた JASON LEE-REUTERS
<10月1日に国内で見られた全く異なる表情も、実は似た者同士である中国とアメリカとの対立も、時代の大いなる皮肉。中国の姿勢には、世界で一定の支持がある>
中国が建国70周年を迎えた10月1日、北京と香港は非常に異なる様相を見せた。
北京では、毛沢東のような人民服を着た習近平(シー・チンピン)国家主席が見守るなか、兵士1万5000人による軍事パレードを実施。市民パレードも行われ、中国の偉大な過去と明るい未来をテーマにした山車と共に10万人が行進した(この日を青空で迎えようと工場の稼働停止などの対策が取られたが、残念ながらスモッグは完全には消えなかった)。
一方、香港では権力が別の形で発動された。17週目に突入したデモの参加者に、香港警察が実弾を発射。一連のデモで実弾による初めての負傷者が出た。
だが習はこの日の演説で、香港については一般論として触れただけだった。「中国が前進するに当たり平和的な再統一と一国二制度の原則を支持し、香港とマカオの繁栄と安定を維持し、中台関係の平和的発展を促進し、完全な統一に向けた努力を続ける必要がある」
外から見れば、習の見方は理解し難い部分がある。中国共産党の直接支配が及ばない地域で暮らす「中国の子供たち」は、その支配下に置かれたいとは全く思っていないからだ。現に逃亡犯条例改正案への抗議に端を発した香港のデモは、民主化と高度な自治を求める運動へと発展している。
演説で中国の「平和的台頭」を強調しつつ、習は「国際社会と協力し、人類共通の未来に向けて邁進する」と述べた。中国が経済発展を遂げてきたのは確かだろう。だがそれよりも世界に強い印象を残すのは、香港での衝突や、ITを駆使した新疆ウイグル自治区の監視社会化だ。
世界の受け止めも二分
「人類共通の未来」は世界の共感を得られるのか。国家主権の重視や、欧米とは異なる経済・政治の道を歩む中国の姿勢には一定の支持がある。特に経済・政治の自由化の恩恵を受けにくい国々は支持する傾向が強い。
米ピュー・リサーチセンターの香港デモ前の調査によれば、中国は欧米や東アジアでは不人気だが、東欧、中東、アフリカ、中南米では印象がよかった。
この差は、中国による新疆ウイグル自治区でのイスラム教徒大量拘禁への反応にも表れている。7月の国連人権理事会では、EU諸国や日本など加盟22カ国が人権侵害の停止を求める共同声明を発表した。一方、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は、以前はウイグル人に対する中国の弾圧を「人類の恥」「大量虐殺のよう」と非難していたものの、7月に訪中し、習に経済協力を呼び掛けた際には批判的な態度を一変させた。イスラム圏の他の国々も慎重な姿勢を保っている。