道もクルマも家も飲み込まれ... 台風被害ラオス、救援訴えた女性は政府批判で逮捕
人権団体が相次ぎ抗議
1922年に発足した国際的非政府人権団体の連合体である「国際人権連盟(FIDH)」はサヤブリさんの逮捕について「言論の自由の権利に反する受け入れがたいことである。彼女は単に自分の地域への支援を求めただけであり、逮捕は信じがたい行為である」とRFAに対して述べた。
また人権団体「アムネスティ・インターナショナル」も「サヤブリさんは政府を転覆しようとか中傷しようと意図したわけではない」として即時釈放を求めているという。
タイで活動中のラオス人活動家が不明に
ラオスの人権活動家については当局の追及を逃れるためにタイで活動中だったラオス人活動家の男性オド・サヤボン氏(34)が8月26日にタイ・バンコク市内のアパートで同居者に「夕食に行ってくる」と外出して以降行方不明になった事件も起きている。
人権問題を主に伝えているブナール・ニュース(ネット版)やRFAの報道によると、オド氏は6月16日にバンコクで開かれた集会に参加するなど、ラオスで捕らわれている政治犯の釈放や人権状況改善を訴える活動をしていたという。
オド氏の知人はメディアに対し「行方が分からなくなった当日の午後6時ごろにサヤボン氏から携帯電話のメッセージで夕食の準備に関する連絡があり、午後11時まで待ったが来なかった」と伝えており、突然姿が消え、その後携帯電話もつながらなくなり行方不明となっている状況を明らかにした。
オド氏は2017年4月にラオスで逮捕されている人権活動家3人の釈放を政府に求める活動に加えて、2012年12月15日に首都ビエンチャン郊外で警察車両に身柄を拘束されて以来行方不明となっている仲間の活動家の捜索も当局に要求していたという。
知人や同じタイ在住のラオス人活動家らはオド氏の失踪はラオス政府への批判と無関係ではないとしているが、シンガポールの「チャンネル・ニュース・アジア(CNA)」に対してタイのコンチープ国防省報道官は「タイとしてはオド氏の件は一切関知していないが、タイは海外の人権活動家を弾圧することはない」として関与を否定している。
一党独裁、報道の自由もないラオス
ラオスは人民革命党による1党独裁国家でマスコミは新聞、テレビなどすべてが政府系で、いわゆる報道の自由は存在せず、人権問題や民主化に関する活動家はネットでの発信を行っているが、治安当局の監視も厳しくタイなど国外で活動しているケースも多い。
フランス・パリに本拠を置く「国境なき記者団(RSF)」が毎年4月に公表している各国の報道自由度ランキングでラオスは180カ国中171位にランクされ、176位のベトナムと同様に東南アジアでは報道自由度が極めて低い国に位置付けられている。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など