最新記事

北東アジア

北朝鮮船がロシアの国境警備艇を攻撃、日本海で多発する国際事件

North Korean Boat Attacks Russian Ship in Latest East Asia Border Clash

2019年9月18日(水)18時00分
トム・オコナー

荒れる日本海(写真は北朝鮮の漁船。2011年9月2日、羅先特別市沖)Carlos Barria-REUTERS

<パワーバランスが変化する北東アジアの海で、周辺国が危険なぶつかり合いを始めた>

日本海を航行中のロシア国境警備隊の警備艇が9月17日、北朝鮮の漁船から攻撃を受けた。ロシア治安機関の1つ、連邦保安庁(FSB)は同日、ロシア国営タス通信に「北朝鮮の漁船の乗組員がロシア国境警備隊船舶監視隊に対し武装攻撃を行った」と語った。3名が重軽傷を負ったという。

その後、ロシアは別の北朝鮮漁船2隻、およびモーターボート11隻を拿捕し、80人以上を拘束した。これらの船舶が、ロシアの排他的経済水域(EEZ)で密漁を行っていたと、ロシア当局は主張する。

ARIRANG NEWS


ロシア外務省は北朝鮮の代理公使を呼び出す予定だと、ロシアのニュースメディア「RIAノーボスチ」は伝えた。

北朝鮮は7月にも、ロシア人15人と韓国人2人が乗船したロシア船籍の船を拿捕したが、10日ほどで解放している。

日本海では、他国の排他的経済水域に侵入して密漁を行う漁船が後を絶たず、国際事件が多発している。北朝鮮とロシアは伝統的に友好関係にあるが、国境警備当局と漁船が絡んだ事案は何度も発生しており、関係に影響しかねない。2016年に起きた事件では、北朝鮮の漁船が日本海のロシアのEEZに侵入したとしてFSBが発砲し、死者も出ている。

<参考記事>【動画】韓国海警、違法操業の中国漁船に初の機関銃700発使用

力関係が変化

日本海で衝突しているのはロシアと北朝鮮だけではない。9月13日には、日本の海上保安庁の巡視船に北朝鮮船とみられる船舶が接近し、ライフルを掲げて威嚇を行う事件が8月に起きていたことが明らかになり、日本政府は北京の日本大使館ルートで抗議を行った。

<参考記事>中国漁船300隻が尖閣来襲、「異例」の事態の「意外」な背景

ロシアと中国が日本海と東シナ海の上空で初の共同警戒監視活動を行った7月には、日韓がともに領有権を主張する竹島(韓国名:独島)付近の上空をロシア軍偵察機が飛行したとして、日韓両国の戦闘機が緊急発進した。その後日韓は、ロシア偵察機にスクランブルをかけた互いの行為を非難し合っている。

中国とロシアが接近し、北朝鮮に接近する韓国が一方で日本と対立を深めるなど、北東アジアで近年、各国の力関係には変化が起き始めている。いつ何が起こるか目を離せない。

(翻訳:ガリレオ)

190924cover-thum.jpg※9月24日号(9月18日発売)は、「日本と韓国:悪いのはどちらか」特集。終わりなき争いを続ける日本と韓国――。コロンビア大学のキャロル・グラック教授(歴史学)が過去を政治の道具にする「記憶の政治」の愚を論じ、日本で生まれ育った元「朝鮮」籍の映画監督、ヤン ヨンヒは「私にとって韓国は長年『最も遠い国』だった」と題するルポを寄稿。泥沼の関係に陥った本当の原因とその「出口」を考える特集です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中