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インタビュー

日本人が知らない監視社会のプラス面──『幸福な監視国家・中国』著者に聞く

2019年8月19日(月)16時25分
森田優介(本誌記者)

梶谷 先日、大学のデジタル出欠確認システムに関するニュースがありました。出欠や成績から退学候補者を洗い出し、事前に面談などのケアを行うというものです。

ツイッターやフェイスブックの書き込み情報を結合させれば、退学候補者の予測精度はより向上するかもしれません。あるいは中国ではすでに一部で導入されているように、授業中の表情解析によってどれだけ集中できているかという情報を加味することも考えられます。

今すぐ日本で導入することには抵抗が強いでしょうが、もしこの取り組みで退学者を激減させられるとしたら、私たちはそれでも拒むのかが問われているのです。

また、これも先日話題となった(就職情報サイト)リクナビの内定辞退率予測については、学生側にメリットが見いだせず、またリクナビは学生に情報を提供させつつ不利益を与える利益相反の立場にあった、データ活用の方法を具体的に伝えていなかったなどの瑕疵(かし)があり、厳しい批判を受けました。

ただ、将来的にはこうした問題をクリアするような内定辞退率予測システムも登場するかもしれません。例えば、学生がデータを提供することによって、言葉以上の重みで「貴社こそが私の本命企業だ」と伝えられるのであれば、一定のメリットを持つでしょう。

もし「デジタル化=監視社会化」の流れが続くとしても、これまでのようにただなし崩し的に"慣れ"ることで導入を認めていくことがいいのか、というのが、もう一つの問題です。導入にあたって市民社会によるチェックを有効に働かせる方法はないものか、この点についても著書では検討しています。プライバシーか利便性かの二者択一ではないデジタル化=監視社会化の議論が今、求められているのです。


幸福な監視国家・中国
 梶谷 懐、高口康太 著
 NHK出版新書

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