京都・ラオス・ベトナム......襲われたタイ反政府活動家 微笑みの国もう一つの顔
相次ぐ国外の活動家の受難
ベトナム政府、治安当局は5月8日にタイ王室を批判するなどして不敬罪容疑でタイ当局が行方を探していたタイ人活動家のチューチープ・チワスット氏、シアム・ティラウット氏、クリシャナ・タプチャイ氏の3人をベトナム国内法の不法入国、不法滞在、資格外活動容疑で身柄を拘束し、タイ当局者に引き渡した。
しかし米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」などによると、その後3氏は行方不明となっており、タイ政府は「なんら報告を受けていない」と説明するのみという事件も起きている。
このようにタイでは国内外で、軍によるクーデターや軍事政権への批判、今回の民政移管選挙に関して野党を支持する活動、さらに2016年10月に死去したプミポン前国王から王位を継承して2019年5月に正式に誕生したワチラロンコン新国王体制となったタイ王室への"許されざる批判"などを続けてきた活動家、言論人に対する「弾圧」「言論封鎖」ともいえる事件が連続している。
ASEAN会議開催中には連続爆弾テロも
そうした混沌とした状況のなか、8月2日東南アジア諸国連合(ASEAN)による外相会議、拡大外相会議、ASEAN地域フォーラム(ARF)などの一連の会議が開かれていたバンコク市内で9件もの連続爆弾事件が起きた。
プラユット首相は即座に事件を非難するとともにタイ南部で武装闘争を続けるイスラム系組織の犯行を示唆、南部ヤラ県で爆弾事件に関連した容疑者として2人の男性を逮捕したと発表した。
さらに8月4日には同じ南部のパッタニー県で3か所の銀行ATMが爆破される事件も発生するなど治安情勢への懸念も高まっている。
プラユット首相は事件後マスコミに対して「法の裁きを受けさせるべきは少なくとも10人はいる。現段階ではいかなる政治的背景をも排除しないが、民主的に選ばれた政府とともにタイが前進しようとしているのを阻害しようとする悪意を持った容疑者らを許すことはできない」とコメントした。
自由な言論への厳しい姿勢、そして相次ぐ爆弾事件......。民政移管を果たし、新国王体制で新たな歩みを始めたとするタイだが、この国の人びとからは「微笑み」が失われかねない事態となっている。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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