最新記事

ロボット

サササッと機敏、踏まれてもOK、ゴキブリを模倣した小型ロボットが開発される

2019年8月7日(水)18時00分
松岡由希子

踏まれても大丈夫...... Stephen McNally/UC Berkeley

<カリフォルニア大学バークレー校の研究チームは、ゴキブリから着想し、速く移動する耐久性の高い昆虫サイズのソフトロボットを開発した......>

ゴキブリは、硬くて丈夫な表皮に覆われており、発達した脚によって速く走れ、扁平な形状ゆえ狭い場所に潜みやすい。このようなゴキブリの特徴を模倣した小型ロボットが開発された。

速く移動する耐久性の高い昆虫サイズのソフトロボット

米カリフォルニア大学バークレー校の研究チームは、2019年7月31日、学術雑誌「サイエンス・ロボティックス」において、「ゴキブリから着想し、速く移動する耐久性の高い昆虫サイズのソフトロボットを開発した」との研究論文を発表した。

このロボットは、長さ3センチ、幅1.5センチの長方形で、重さはわずか0.064グラム。1秒間に体長の20倍の距離を移動する。この速度は、ゴキブリの移動速度と同等で、昆虫サイズのソフトロボットとしては史上最速だ。傾斜を上ったり、自重の6倍の重さのものを運んだりでき、自重のおよそ100万倍に相当する59.5キロの成人に踏まれても壊れなかった。

Cockroach-robot1.gif

Stephen McNally/UC Berkeley

災害時、救助隊員や救助犬が立ち入れない場所に

小型ロボットは、地震などの災害時、救助隊員や災害救助犬が立ち入ることのできない場所に導入できることから、捜索活動にも役立つと期待が寄せられている。そのためには機敏かつ丈夫であることが必要だが、従来の小型ロボットは、脆弱なものがほとんどであった。

このロボットには、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)と呼ばれる圧電材料を採用。圧電材料は、電圧を印加すると伸縮するという特性を有している。研究チームは、ポリビニリデンフルオリドを弾性ポリマーの層で覆い、ロボット全体が曲がるようにしたうえで、前方に脚を付けた。電界によってポリビニリデンフルオリドが伸縮すると、振動によって跳躍運動で前方に移動する仕組みだ。

このロボットは、試作段階では、電圧をかけるための細い針金でつながっているが、研究チームでは、このロボットが独立して駆動できるよう、バッテリーを装着させる試みにも着手している。また、ガスセンサーを実装するなど、実用化に向けた実験にも取り組んでいく方針だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国CPI、2月は0.7%下落 昨年1月以来のマイ

ワールド

米下院共和党がつなぎ予算案発表 11日採決へ

ビジネス

米FRBは金利政策に慎重であるべき=デイリーSF連

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望的な瞬間、乗客が撮影していた映像が話題
  • 3
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手」を知ってネット爆笑
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 6
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    中国経済に大きな打撃...1-2月の輸出が大幅に減速 …
  • 9
    鳥類の肺に高濃度のマイクロプラスチック検出...ヒト…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 6
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 7
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中