韓国で広がる日本製品の不買運動、韓国企業も損失で否定的な意見も
韓国でユニクロを展開するFRLコリアはファーストリテイリング51%、ロッテショッピングが49%出資した合弁会社で、無印良品もロッテ商事が株式の40%を保有する。ロッテアサヒ酒類もアサヒグループホールディングスとロッテ七星飲料が50%ずつ有しており、いずれも日本企業が商品を供給し、ロッテが流通と販売を担っている。
キリンビールはハイト眞露、サントリープレミアムモルツはOBビール、サッポロビールは毎日乳業の子会社が輸入販売を行なっており、不買運動が長期化すれば日本企業の出荷量は減少するが、リスクを負うのは韓国企業である。日本ビールの落ち込みによる損失を自社製韓国ビールの売上でカバーすることになるのだ。
日本路線の拡充を進めてきた韓国LCCはさらに深刻だ。1200便余りある日韓路線の91%を韓国の航空会社が運行しており、もっとも少ないエアプサンは31.1%、エアソウルは国際線の66%を日本路線に頼っている。9月の連休を間近に控え、また来年1月から3月期の繁忙期まで続くのか、マーケティング計画を立てることすらできない状況だ。
ソウルの南大門市場など、日本製品の販売で生計を立てている小規模商人は少なくない。小商工人連合会は、運動が長期化して小規模商人の被害が拡大する事態を懸念している。
さらに農水産業界も動向を注視する。日本は韓国産農水産物と食品の最大の輸出先で2018年度は13億ドルを輸出した。経済報復が食品に及ぶと韓国の農漁民が直接被害を受けることになりかねない。
両国民間の感情の悪化がより深刻だ
やや余談になるが、在韓日本人はたびたび日本のテレビや新聞等の取材を受けることがある。今回も「危機を感じる」という回答を求めるメディアが多く、そうしたメディアの姿勢に不信を抱く在韓日本人は少なくない。
日本大使館が入居する建物の近くで車両が炎上し、釜山総領事館でデモが発生したことを受け、外務省はデモや集会を避けるように注意を促すが、こうした注意喚起はよくあることだ。
私の周辺でも、日頃から日本製品に馴染んでいる韓国人たちは従来通り日本ブランドを購入しているし、日本料理店の常連客に変化はない。訪日観光のリピーターは日本を訪問し、航空券の値下がりを期待して毎日のように運賃をチェックするハードリピーターもいる。
いっぽうロッテマートソウル駅店は利用客の多数を日本人が占め、数年前まで中国人で溢れかえった明洞も日本人観光客で賑わっている。日本にいる家族や友人に、冷静に判断するよう伝え、SNSで発信している在韓日本人も多い。
韓国メディアの多くも不買には否定的だ。韓国経済新聞は社説で、韓国裁判所の賠償判決や日本政府の経済報復より、両国民間の感情の悪化がより深刻だと懸念を表している。