最新記事

韓国事情

韓国で広がる日本製品の不買運動、韓国企業も損失で否定的な意見も

2019年7月26日(金)19時00分
佐々木和義

韓国でユニクロを展開するFRLコリアはファーストリテイリング51%、ロッテショッピングが49%出資した合弁会社で、無印良品もロッテ商事が株式の40%を保有する。ロッテアサヒ酒類もアサヒグループホールディングスとロッテ七星飲料が50%ずつ有しており、いずれも日本企業が商品を供給し、ロッテが流通と販売を担っている。

キリンビールはハイト眞露、サントリープレミアムモルツはOBビール、サッポロビールは毎日乳業の子会社が輸入販売を行なっており、不買運動が長期化すれば日本企業の出荷量は減少するが、リスクを負うのは韓国企業である。日本ビールの落ち込みによる損失を自社製韓国ビールの売上でカバーすることになるのだ。

日本路線の拡充を進めてきた韓国LCCはさらに深刻だ。1200便余りある日韓路線の91%を韓国の航空会社が運行しており、もっとも少ないエアプサンは31.1%、エアソウルは国際線の66%を日本路線に頼っている。9月の連休を間近に控え、また来年1月から3月期の繁忙期まで続くのか、マーケティング計画を立てることすらできない状況だ。

ソウルの南大門市場など、日本製品の販売で生計を立てている小規模商人は少なくない。小商工人連合会は、運動が長期化して小規模商人の被害が拡大する事態を懸念している。

さらに農水産業界も動向を注視する。日本は韓国産農水産物と食品の最大の輸出先で2018年度は13億ドルを輸出した。経済報復が食品に及ぶと韓国の農漁民が直接被害を受けることになりかねない。

両国民間の感情の悪化がより深刻だ

やや余談になるが、在韓日本人はたびたび日本のテレビや新聞等の取材を受けることがある。今回も「危機を感じる」という回答を求めるメディアが多く、そうしたメディアの姿勢に不信を抱く在韓日本人は少なくない。

日本大使館が入居する建物の近くで車両が炎上し、釜山総領事館でデモが発生したことを受け、外務省はデモや集会を避けるように注意を促すが、こうした注意喚起はよくあることだ。

私の周辺でも、日頃から日本製品に馴染んでいる韓国人たちは従来通り日本ブランドを購入しているし、日本料理店の常連客に変化はない。訪日観光のリピーターは日本を訪問し、航空券の値下がりを期待して毎日のように運賃をチェックするハードリピーターもいる。

いっぽうロッテマートソウル駅店は利用客の多数を日本人が占め、数年前まで中国人で溢れかえった明洞も日本人観光客で賑わっている。日本にいる家族や友人に、冷静に判断するよう伝え、SNSで発信している在韓日本人も多い。

韓国メディアの多くも不買には否定的だ。韓国経済新聞は社説で、韓国裁判所の賠償判決や日本政府の経済報復より、両国民間の感情の悪化がより深刻だと懸念を表している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米停戦案「現状のままでは受け入れ不可」=ロシア外務

ワールド

米下院民主議員、ケネディ厚生長官を調査 鳥インフル

ビジネス

米建設支出、2月は前月比0.7%増 予想上回る

ワールド

米民主党主導州、トランプ政権を提訴 医療補助金11
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中