最新記事

生物

腹部がキラキラと光るクマムシが発見される

2019年7月25日(木)17時44分
松岡由希子

Rafael Martín-Ledo- twitter

<微小動物を研究しているスペインの生物学者が採集したクマムシを顕微鏡で見たところ腹部がキラキラと光っていることに気づいた......>

クマムシ(緩歩動物)は、頭部と四節の胴からなり、四対の足を持つ、体長50マイクロメートルから1.7ミリメートルの微小動物だ。高温や低温、乾燥への耐性が強く、陸上、陸水、海洋のあらゆる環境で生息できる。

これまでに1000種以上が確認されており、その多くは、コケ類の隙間や森林の落葉土中などで、堆積物内の有機物に富んだ液体や動物の体液、植物の組織液を吸入して餌としながら生息している。

抜けた歯針をクマムシが偶然、飲み込んだ?

長年、クマムシなどの微小動物を研究しているスペインの生物学者ラファエル・マーチン=レド氏は、スペイン北部サハ川の土手で採集したクマムシを位相差顕微鏡で観察し、腹部がキラキラと光っていることに気づいた。マーチン=レド氏のツイッターアカウントには、その様子を映した動画が投稿されている。


クマムシの腹部が光っている物質について、マーチン=レド氏は、二枚貝の殻の成分としても知られるアラゴナイト(霰石)ではないかとの仮説を立てている。

クマムシの長い管状の口には2本の歯針があり、これを使って植物や無脊椎動物に穴を空け、組織液を吸い込む仕組みとなっている。歯針の主成分はアラゴナイトであり、クマムシが脱皮する過程で生え変わる。
このようなクマムシの生体構造をふまえ、マーチン=レド氏は、「脱皮に伴って抜けた歯針をクマムシが偶然、飲み込んだのではないか」とみている。


クマムシが食べた藻類か細菌?

一方で、マーチン=レド氏の仮説に異を唱える学者もいる。2018年に山形県鶴岡市でクマムシの新種「ショウナイチョウメイムシ」を発見した慶應義塾大学環境情報学部の荒川和晴准教授は、科学ニュースメディア「サイエンスアラート」の取材に対して「適切な研究論文がない以上、評価することはできない」としながらも、「このキラキラと光る物質がアラゴナイトの結晶だとするならば、クマムシが食べた藻類もしくは細菌によるものではないか」との見方を示している。クマムシの歯針は、通常、脱皮中に排出されるため、これを飲み込んでしまうことは考えにくいという。

クマムシの腹部でキラキラと光っている物質の正体やその原因、メカニズムについては、さらなる研究を待つ必要がありそうだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザでの戦争犯罪

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、予

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッカーファンに...フセイン皇太子がインスタで披露
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 5
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 6
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中