最新記事

香港

香港デモの対応迫られる中国政府、人民解放軍の出動も?

China Scrambles To Deliver Hong Kong Strategy As Island Braces For Another Sunday Of Protests

2019年7月25日(木)12時57分
ジェームズ・パターソン

中国政府の出先機関の建物に落書きをする香港デモ隊(2019年7月21日)  Edgar Su-REUTERS

<香港のデモが一向に収束せず、中国政府も事態収拾の圧力にさらされはじめた。秋以降は重要イベントも控えている>

香港では、刑事事件の容疑者を中国本土に引き渡すことを可能にする逃亡犯条例改正案をめぐる激しい抗議デモが続いており、中国指導部も事態収拾の圧力にさらされている。香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官はこの改正案は「死んだ」と発言して事実上の廃案を表明したものの、正式な撤回を求めてさらなる抗議デモが行わると予想される。

デモ隊は、問題の改正案が成立すれば、中国当局が容疑をでっち上げて特定の人物を逮捕できるようになると主張している。一連のデモでは、警察や政府庁舎が襲撃される事態も発生しており、デモ隊との衝突でこれまでに数人の警察官が負傷した。まさに混乱状態だ。

中国には、差し当たってデモを鎮静化するための短期的な計画と、対香港政策の大きな変更につながる可能性もある長期計画の両方が求められる。香港はかつてイギリスの統治下にあったが、1997年7月1日にイギリスが香港の主権を中国に返還。中国は香港を「特別行政区」と呼び高度な自治を認めているが、正式には、香港は中国の一部だ。

気づいたら手遅れ

香港の混乱を収めるために、中国政府が人民解放軍(PLA)を動員する可能性も囁かれている。香港にはPLAの駐屯地があり、必要とあればすぐに出動できる。中国国防省の報道官は7月24日、香港政府からの要請があれば、PLAの出動は可能だと会見で語った。

中国指導部は、デモの規模や激しさについて情報収集をするために香港に要員を派遣したものの、正確な状況把握はできていなかった。シンガポールの新聞トゥデイのオンライン版(7月18日付)は、「中央政府の指導部は、香港が手に負えない状況になるまで気づかなかった。今後、システムの見直しが行われるのは確実だろう」という中国政府関係者(匿名希望)の発言を報じた。

また香港紙サウスチャイナ・モーニングポストの報道によれば中国政府は、中国の発展を阻むために、諸外国の工作員がデモに関与している可能性もあると警戒している。一連の抗議デモが単発的なものか、それとも敵の工作員による仕業なのか、ほとぼりが冷めるまで様子を見るというのが、彼らの当面の戦略だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、イラン核施設への限定的攻撃をなお検討=

ワールド

米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止を命令

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 4
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 7
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 8
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 9
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 10
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中