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東アジア苦境・韓国の中国離れはトランプに大朗報
韓国経済界の代表と会見する文在寅大統領 Yonhap-REUTERS
<中国の政治的な不確実性、産業スパイの懸念などから今後も韓国の脱・中国の流れは続きそう>
アメリカのトランプ政権はいささか強引過ぎるやり方で、友好国の企業に中国との「縁切り」を迫っているが、韓国は一足先に脱・中国を開始した可能性がある(写真は韓国経済界の代表と会見する文在寅〔ムン・ジェイン〕大統領)。
香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストによると、韓国企業はここ数年、中国市場への関与を減らし、ベトナムへの投資とサプライチェーンの多様化を推進している。ロッテグループやサムスンなどの企業がこのような意思決定に至った理由は、中国の政治的な不確実性、産業スパイの懸念、アメリカによる制裁の恐れなどだ。
例えば韓国へのTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備に対する中国の反発は、韓国企業に中国投資の安全性への疑念を抱かせた。中国では中央政府と地方で規制がばらばらなため、企業は統一的な経営戦略が立てづらい。さらに、韓国企業は中国市場における現地企業との競争で優位性を失いつつある。
ベトナムにも中国と同様の問題はあるが、中国に比べて資本の集積度が低く、欧米に敵対的ではなく、国内市場の競争も激しくない。将来的には他の国々も韓国に続く可能性がある。
日本による半導体素材などの韓国への輸出管理強化の影響はまだ不明。代替品を探す韓国が中国に目を向ける可能性はあるが、全体としては今後も韓国の脱・中国の流れは続きそうだ。
トランプ政権にとっては願ったりかなったりだろう。中国を世界経済から排除することは現時点ではまず不可能だが、一部の企業(外国企業も含む)が自主的に中国離れを進めれば、さまざまな政策手段を動員して「中国外し」を加速させることが可能になるかもしれない。
もっとも、多くの面で中国企業が韓国勢に追い付いてきたことを考えれば、韓国の脱・中国は遅きに失した感もあるが......。
<本誌2019年7月23日号掲載>
From thediplomat.com
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